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第43話

程なくして梅雨が明けた。 あの激しい雷雨の日を発端とした瀬名との関係は、瀬名に事情があったみたいで少しずつ減っていき、日を追うごとに、じりじりと焼け付くような太陽が本領を発揮し始めた。 夏到来だ。 瀬名とは学校で隣に座るだけのクラスメイトという間柄に落ち着いている。 瀬名から連絡がないのはホッとする反面、いつ呼び出されるのかと身構えていただけに拍子抜けする部分もあった。 何だっけ?夏休みのイベントがどうとか、締め切りがどうとか言ってたっけ。 その締め切りまでに何かやらなくちゃいけないことがあったみたいで忙しいと言っていた。 あとは、ネタを沢山ありがとうとか礼まで言われたな。 何だかよく解らないが掘り下げてそれが何なのか突き詰める気はさらさらない。きっと趣味絡みのことなんだろう。実は美形のクセにやっぱりキモいやつだ。 終業式。 夏休みを目前に皆テンション高くそわそわと浮き足立ち、しかし教師から渡された山積みの課題を見てげんなりする。 「うわー鬼かよ、この宿題の量ダルいわー。……あっ!今度の旅行でオタク達と仲良くなってさ、宿題やらせりゃいいんじゃねぇ?」 俺って頭いい!と永谷が親指を立てたが何せ声がデカい。オタク達と名指しされた瀬名を始めとするグループ一同がガッツリこっちを見ている。 丸聞こえなんだろうな。バカだろ、と林田に突っ込まれていて笑った。 あぁ、平和だ。しかしこれが普通なんだ。俺と瀬名の間に起った事は異常な出来事で、それが無ければ無いでそっちが当たり前なんだからと自分に言い聞かせられる。 もうしばらく女も男もナシにして、友情に生きるのもいいかもな。 ぼんやりそんなことを考えていたらポケットの中で携帯が震えた。 嫌な予感。 ポケットから携帯を出して見てみるとメールが一通。瀬名からだった。 予感的中……。ちらりと横目で勘の鋭い風早がこちらを見ていないか確認してメールの中身を確認した。 『どういうつもり。今日の帰りにうち寄ってね』 どういうつもりとは、どういうこと? もしかして……俺が海に誘ったこと、気にいらなかったんだろうか。 何だかわからないけどまたまた嫌な予感。きっと俺が行かないと拒否しても、今までにシたあれこれをネタに脅されるんだ。間違いない。瀬名の家に寄る選択肢しかないわけだ。 でも……。よくよく考えてみれば、ホント何で瀬名なんかを誘っちゃったんだろ。 コイツらはオタク向け海の家が目当てな訳だし、どう考えたって一緒に何か出来るような感じじゃないよな。 瀬名とエロいことするのは以ての外だし他に一緒にいる目的なんてないような……。 琴音ちゃんにはあゆみちゃんと仲良くなって欲しい気持ちがあったから誘っちゃったわけだけど……。 瀬名は……。 皆でビーチボール?ビーチフラッグ?スイカ割り?……いや、ないない。 それより、瀬名が脱いだらスゴいんです!ってことを皆に教えたいのか? 海水浴するのにメガネどうすんの。 どうしたって海に入るなら海パンだし、瀬名のきれいな筋肉を皆にお披露目することになる。 あ……なんかモヤモヤする。 ……瀬名が実はカッコいいとか皆に知られるの、イヤだ。

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