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第44話
大体俺より格好いい男とか敵対心しか湧かないし、そもそもアイツは美少女趣味のアニメオタクで……。
どんなに実はイケメンだとしても気持ち悪いことに変わりはない。
……でもやっぱり、アイツのあの姿は誰にも見せたくない。理由はハッキリしないけど嫌だ。
結局、俺達の夏休み旅行は林田の別荘に1泊させてもらうこととなった。
プライベートビーチがあるってことでオタク系海の家を目的とした瀬名達とはやっぱり別行動となりそうだった。
集合場所や時間など大まかなことを決めて一学期を終えた。
帰宅途中、俺はというと、のろのろと重い足取りで瀬名の家へ向かっていた。
自転車のペダルがやけに重く感じる。
『どういうつもり』
気が重いのもペダルを漕ぐ足が重いのも、このメールのせいだった。
何のことやらさっぱりだけど、俺に何か文句の一つでも言いたいような文面にしか思えなかった。
だとしたらどう考えても、海に誘ったことを意味しているんじゃないだろうか。
だって、心当たりが他にないんだから。
もし俺が超インドアなのにアウトドア誘われたら嫌かもしれない。
日陰が大好きなのにお日様の下に連れてこられたら死んじゃうかも。
嫌がられる理由なんてそれくらいしか思いつかない。
あ!もしかしたら永谷が宿題やらせようとかバカみたいなことを言ったからか!?
でも……瀬名達はコスプレ海の家とやらが目当てで、俺達の旅行に便乗してるところだってあったと思う。
それに俺は瀬名に恥かしいことされた側、どちらかというと被害者で、責められるようなことはしてない。
わかんねぇ。俺は頭をガシガシと引っ掻いた。
見慣れた赤茶色のレンガ造りが見えてきた。のろのろと時間をかけて瀬名の住むアパートに到着だ。
瀬名の部屋の前。ためらいがちに伸ばした指でインターホンのボタンを押す。
しばらくしてドアが開き、瓶底メガネを掛けたままの瀬名とオタク仲間の八雲が顔を出した。
「え……」
何で八雲が居るんだろう。訳のわからないまま、瀬名に上がってと促され靴を脱いだ。
リビングに通され、そこで八雲が自分の物であろうカバンの中身を床にバラバラと振り落とす。
「……なんだ、これ」
「なんだじゃないよ。どういうこと」
八雲が俺を睨み付ける。
俺の足元には引きちぎられた教科書、折られた鉛筆や、ペンキのような物で真っ赤に染められた体操着が落ちていた。
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