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第45話

めちゃくちゃにされた八雲の私物、そして八雲の俺を睨む鋭い眼。 この状況から考えると、どうやら俺はこれをやった犯人だと疑われているらしい。 だけど、俺じゃない。 瀬名をパッと見たが、瓶底メガネの表情は計り知れず、仕方なく八雲に向き合った。 「これ……八雲の?」 「見てわかるだろ。体操着にも教科書にも、僕の名前書いてあるだろ」 ですよね、やっぱり私物ですよね。 でも。 「俺は神に誓って無関係だけど」 「無関係なのに何でこんなものが一緒に入ってるわけ?」 八雲がしゃがみこみ、足元に落ちた物の中から何かを拾い上げた。 生徒手帳……? 黙って見ていると八雲がパラパラと手帳を捲り、俺に差し出した。 「え……、何これ、俺の!?」 一瞬体が硬直した。俺の写真が貼ってある。 ちょっと待て。俺の生徒手帳はカバンに入れっぱなしだぞ。俺のカバンに入ってる筈だろ。 何で……!? 俺は慌てて自分のカバンを漁ったが、生徒手帳は出てこなかった。 八雲が手にしているそれが正真正銘俺の生徒手帳だった。 「これ羽柴君のだよね。明日から夏休みだから体操着なんかはまだ新しいのを準備出来るけど、どうしてこんなことするの。僕羽柴君に何かしたのかな。どうしてくれるのこれ?……大体進級した当初から僕は君のこと好きじゃなかったんだ。僕達のこと汚物か何か見るような目で蔑んで……。羽柴君の女好きは周りに迷惑かけるだろうけど、僕たちのオタク性は誰にも一切迷惑かけたりしてないからね?ちょっと見た目が可愛いからって調子に乗ってるんじゃないの。しかもこんな人のものをめちゃくちゃにして」 八雲が苛立ちを隠さずに言う。俺がやったと決めつけて。ついでに腹に溜め込んでいたと思われる愚痴までぶつけられ心底居たたまれない気持ちになった。 しかし俺には身に覚えのないことで、しかも生徒手帳が一緒にされていたからといって犯人と決めつけられるのは到底納得できない。本当にやってないのだから。 「俺はやってない。第一そんな生徒手帳を残すとか本当にやったならそんな間抜けなことしないと思わねぇ?俺ならそんなこと絶対しないし……それに、俺は八雲のこと好きじゃないけどイジメとかそんなことしてまで関わり合いたいとも思ってない。八雲に全然関心はないよ」 八雲の顔が険しくなった。 コイツってこんな顔するんだ……と頭の隅で思った。白くて細くて大人しいイメージしかなかったけど、こんな風に怒りを露わにするなんて。 「信じられない。……瀬名、瀬名も何か言ってやってよ。俺のもの、こんなにしたんだよ!ご丁寧に生徒手帳まで残してさあ!」

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