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第46話

「羽柴君はやってないんだよね」 瀬名が口を開き、俺を探るように言った。その言い草にカチンとくる。 人の事散々弄んでおいて、さらにはイジメの犯人扱いか?って。 「……やってない」 少し声が震えた。 瀬名にまで疑われているのかと悔しくなる。 「はっ、どうだか。瀬名だって言ってたじゃないか。羽柴君は俺達の事をバカにして見下してるって。だからこれ……羽柴君がやったとしか思えない!」 八雲は声を荒げて、瀬名の胸にしがみつく。 「ね、ひどいよね!教科書はボロボロのズタズタだし、体操着なんて血みどろになったみたいに真っ赤だし!……絶対に羽柴君がやったんだよ!」 「や、やってない」 八雲は瀬名のシャツを握り締めながら顔をこっちに向けた。 「じゃあ羽柴君の生徒手帳は何なんだよ!何で僕のカバンに入ってたの!」 「そ、そんなの、俺が聞きたい……」 泣きたくなった。 濡れ衣を着せられるってこういうことか……。やってないのに何で責められるんだ。 八雲と瀬名はどういう関係?ただのオタク仲間?にしちゃ、瀬名の胸に縋って甘えて……。なんか変だ。 八雲は瀬名を味方につけて俺を犯人にしたいようにも思えた。 ……もしそうだとしたら何の茶番だろう。そんなことして一体誰に何の得があるのかもわからない。 どうしてこんなことになってしまったのか、全く俺には検討もつかなかった。 それよりも瀬名に縋る八雲を見ていたくない。いろいろな事が一気に重石のように伸し掛かり、胸がはちきれそうだった。 「俺やってないし、生徒手帳返せよ。俺帰る」 八雲の手から引ったくるようにして手帳を奪い、帰ろうと踵を返したその時ぐっと手首を掴まれ足が止まった。 「俺と話そう」 デカい手……。俺の手首を一周片手で掴んで瀬名が言う。 「八雲、悪いけど羽柴君と二人で話したい」 八雲がぎゅっと眉根を寄せた。 「羽柴君羽柴君って……最近の瀬名はおかしいよ!僕がされたことはどうでもいいわけ!?」 「どうでもいいとは言ってない。感情的になってちゃ解決策が見えてこない。八雲はとりあえず帰って」 「何なの瀬名、まさか探偵気取り?どう考えたって犯人は羽柴君一択でしょ!?……僕、羽柴君のこと許さないから!」 八雲はそう言ってグチャグチャになった私物をそのままに瀬名の部屋から出て行った。

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