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第47話

あぁもう、なんて面倒なことに巻き込まれてんだろ俺。 「お前も俺のこと疑ってんの」 「……」 「……疑ってんだよな。だって……どういうつもりってメールに書いてあったし。俺がやったの前提って感じ……」 「羽柴君は俺達のことが嫌いだよね。それは同じ教室にいるとびんびん伝わってくるんだ。だから八雲は羽柴君が犯人だと信じて疑わない。俺は羽柴君じゃないと思いたい」 「俺はやってない。……確かにお前たちのことは好きじゃないけど。第一、そこまでお前らに興味ねぇし」 「興味がないなら、なんで俺達を海に誘ったの」 「……」 答えに詰まった。 それは……。 認めてしまえば、簡単なことで。俺は瀬名が……。 「……瀬名、俺は……瀬名を誘いたかった。瀬名と海行きたいと思った。……それだけ」 そう、ただそれだけで、八雲達なんてオマケみたいなもんで……。 声に出して改めて自分が瀬名に特別な感情を持ってるってことに気付いた。 「わかった。羽柴君じゃないんだね。信じるよ」 掴まれた手首がぐっと引き寄せられて俺の頭が瀬名の胸に落ちる。 瀬名の香りがする。 「そのまま聞いて」 瀬名は俺を抱き寄せたまま話し続けた。 俺は疲れと安心とで力が抜け、瀬名にそのまま身体を預けた。 瀬名の指が優しく俺の髪を梳く。 「八雲の件は俺が調べてみるよ。羽柴君は十分身の回りに気をつけて」 瀬名の言葉にこくんと頷く。 やってもいないことをやったと決めつけられるだけで胸が痛かった。 私物をめちゃくちゃにされた八雲だってきっと不安だろう。 取り留めのない不安が押し寄せ唇を噛みしめる。 「瀬名……」 俺は瀬名の顔が見たくてそっと瀬名の瓶底眼鏡を外した。 切れ長の双眸が真っ直ぐ俺を見ている。俺にはない、男の色気が香り立つ。 どうしよう。 キスしたい。 瀬名とキスしたい。 触りたい、触って欲しい。 不安が募るほど縋りたくなる。瀬名は俺を守ってくれるんじゃないかって、あの雷雨の日を思い出す。 「大丈夫だよ、羽柴君」 「……うん」 こんなに甘い空気が広がっているのに、あの時の瀬名の言葉を思い出し、俺はぶんぶん頭を横に振った。

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