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第52話
「大丈夫。俺達がついてる」
風早の心強い言葉に目の裏側がじんわりと熱くなった。
「そうだな。健司は腕っぷしだけはピカイチだしな。他に隠してることはないのか」
隠してること……?いやその前に。
「あのさ……健司って、風早のことそんな風に呼んでたっけ?」
「……っ」
あ、ヤバい。と林田の表情が言っている。林田の手が口許へと飛んでいく。
焦って思わず口許を手で覆ったように見えた。
「まぁ隠しててもいつかボロが出るだろ。な、志乃(シノ)」
「志乃?」
志乃って林田のことか?
今度は風早が林田を名前で呼んだ。
別に名前で呼び合うことなんて普通だと思うけど、この二人……。
「実は俺達付き合ってるんだ」
風早が林田の肩をぐっと引き寄せ小さな声でそう言った。
え……?
「おま……言わないって約束したじゃないか。この嘘つき」
「ごめん志乃。けどこの状況、羽柴が気の毒に思えてさ。しかも相手はあの瀬名だぜ?上手いこと丸く収まればいいけど、どう考えても茨の道だと思わん?俺達だけでも本当のこと話しておけば羽柴だって少しは気が楽になるって」
「まぁ確かに……」
林田が唇を尖らせるのを見て、風早が瞳を蕩けさせて見ている。
マジで付き合ってんのか?
このイケメンとイケメンが……?
この二人の間柄が急にじわじわと現実味を帯びてきて俺は思わず立ち上がり声を上げた。
「え~~~っっ!?マジでつきぁっ、んむっ、むごっ」
すかさず風早と林田も立ち上がり俺の口を塞ぐ。
「羽柴、この事は他言無用で頼む。お前のこともばらしたりしないし、応援するから」
そう言った林田の目が全然笑ってなくて怖い。
「んむ……」
俺は口を塞がれたまま頷き、再びソファーへ腰を下ろした。
「で、他に隠してることはないのか?羽柴」
林田は特にこの話題に触れてほしくないようで、話を反らそうと必死に見えた。
めちゃくちゃ興味深いけど、林田が話してくれそうにないのでこの話はまた今度聞くとしよう。
あ、そういえば。
必要な情報かはわからないが一応話しておくことにした。
「多分なんたけど、琴音ちゃんはあゆみちゃんのことが好き……。で、あゆみちゃんは俺をいつも見てる」
「ちょっと待て。こんがらがってきたぞ」
風早が頭に手を当てた。
「何でその面倒くさそうなメンバーを誘ったんだ」
「……琴音ちゃんとあゆみちゃんは、今は対立してるけど、ちゃんと仲良くなれる気がして。報われない恋みたいなやつに気付いちゃったし、それが辛いってこともわかったし。それにあの二人なら、loveまでは行かないまでもlikeぐらいにはなれるかなって思って。というか、そうなってほしい」
頭に手をやっていた風早が顔を上げた。
「そうだ。俺に名案がある。俺と林田に任せろ!な!」
「名案?」
林田は胡散臭いといった表情で風早を見ているが、風早の目はキラキラと輝いている。
「犯人は、別荘に集まるメンバーの中にいる!」
「……ほんと?」
何か心配になってきた。
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