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第53話

「俺の読みが間違ってなければな」 風早はにっと笑う。何で嬉しそうなんだ。それはさて置き、あと一つ、確認しておきたい。 「瀬名とのこと……軽蔑する?」 脅されて始まった関係は自分も望んで今じゃ快楽を得るための楽しみにもなっている。 瀬名に触れられるのが気持ちよくて、もっともっと、奥まで暴かれたい自分がいる。 抱き合ってキスすると胸がきゅうっと甘く絞られる。 しかし、俺だけがこんな思いをしているとしたらあまりにも滑稽だ。 恐る恐る口にしたこの言葉。言い終えて、口が乾いてることに気付く。答えを聞くのが怖い。 「しないよ」 風早はニッコリ微笑んで、林田は表情をあまり変えずに頷いた。 「よかった……」 安堵に胸を撫で下ろす。 やっぱりコイツら頼って良かったんだ。 「で、付き合ってない、セフレでもないお前たちの関係はさしずめ両片思いとかいうやつなのか?それとも一方的に好意を持ってそんな関係に?告白はしないのか?」 「え……」 告白? あぁ、そうだ。告白なんてお互いにしていないしされてない。 それに好きじゃないと否定もされた。 これってつまりは、やっぱりセフレみたいな関係なんだろうか。 でもセフレってセックスフレンドの略だろう? 俺と瀬名はフレンドでもない。 「俺……瀬名から好きって言われたことない」 そう。そんな感情は俺達の間にあるのだろうか。 瀬名と俺は何なんだ。 ほんと、何だろう……。 目線が落ちる。気持ちも一緒に沈み込むみたいに。 風早がわざとらしくグラスの底に残ったコーラをズズッとストローで吸い込んだ。 「羽柴、大丈夫だよ。俺には見えてる。羽柴の小指からは赤い糸が伸びていて、その先がどこに繋がっているのかが。赤い糸は瀬名にちゃんと繋がってる。……瀬名のこと好きなんだろ?」 赤い糸?赤い糸って運命の赤い糸?そんな物本当にあるのかな。 目を瞑って瞼の裏に見えたのは、おれの小指から瀬名へ向かって伸びる赤い糸。でもそれは、途中で……もつれてる。 俺、瀬名が好きだ。 観念した俺は、黙って小さく頷いた。

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