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第55話
ガタンと音を立ててピンクのカプセルが落ちた。
中にはとろんとした目に口を開いたエロい表情のネコ耳ももにゃんがいた。
「しかもM字開脚……」
……俺がM字やったら瀬名は喜ぶのかな。
って! アホか!バカか!俺!
自分が信じられない。 何でそんな妄想を……。
俺はカプセルだけ専用のゴミ箱に捨て、キーホルダーはジーンズのポケットに突っ込んで、階段を駆け上がった。
殆ど人気のない駅構内。
改札付近に見知った集団を見つけた。
「あ、きたきた、トモくーん!朝から走って元気ね~っ」
ビタミンカラーの短いワンピースで琴音ちゃんがこっちに向かって手を振った。
何もなかったような無垢な笑顔。俺にしたこと忘れてんじゃねぇだろうな……。やっぱり怖い。
琴音ちゃんの隣にはあゆみちゃん。デニムのロングスカートで控え目に俺に手を振る。
おっとりしてて可愛いんだけどね。
その近くには風早達。
「おっせーよ!羽柴!」
永谷が俺の背中をばしんと叩く。挨拶代わりなんだろうが結構痛い。
なんだか煩い旅行となりそうだ。それにしたって!風早と林田のイケメンオーラ!ずるいだろ!
二人ともファッション雑誌から抜け出したみたいに垢抜けていて大人っぽい。風早達が眩しい。
比べて俺と永谷は。ぼ、凡人は盛って雰囲気でカバーだ!
「な!永谷!」
「は?何がだよ。それより水着持ってきたか」
「おうよ」
で、瀬名と愉快なオタク仲間たちはどこ。
キョロキョロ辺りを見回すと、エレベーターから降りてくるモサイ集団を発見した。
「エレベーターって……階段上がれよなぁ、高校男子が不健康な!」
永谷が全うな事を言う。珍しい。
モサイ集団は勿論瀬名御一行様である。全体的な色味が寒色系で、白ぽちゃな河野だけがやけに汗をかいていた。
俺の目がすぐに瀬名を捉えた。サラサラになった黒髪、相変わらずの瓶底眼鏡。白いシャツの上にグレーのジャケット、黒い細身のパンツを身に付けている。
地味である。でも、スタイルが秀でているのは一目瞭然で、首から上を見なければモデルか!と突っ込みたくなるくらいだ。
「待たせたかな、悪いね」
とぽっちゃり河野が言った。瀬名達もそれなりに楽しみらしく、皆表情が明るい。
八雲だけは俺と目が合うとキッと睨んで瀬名の後ろに隠れる。
やっぱりまだ俺は疑われたままみたいだ。
「じゃあそろそろ始発がくるからホームに移動な」
林田の声で各々切符やカードを手にとって改札を抜けた。
するとすぐに風早が俺の肩に手をかけて足を止めた。
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