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第60話

「やっぱり旅行と言えば可愛い女の子がいないと話にならないよな。ちょ、琴音ちゃんおっぱいデカいなおい!あゆみちゃんも可愛いしさ。俺はどっちもオッケーだな」 永谷は俺に小声で言う。 何がオッケーなんだ。アンチ琴音ちゃんだったくせに……。 林田は隣で携帯片手に誰かと電話をしている。あゆみちゃんと琴音ちゃんは何か楽しそうに談笑中だ。 対立してるなんて噂が嘘みたいだ。 「そっか。俺はどっちも狙ってないし、まぁ頑張れ」 適当に永谷に返事をして、俺は瀬名の姿を探した。 「あ、きたきた。瀬名、八雲遅いぞ。みんな待ってるよ」 河野の声で瀬名と八雲がこっちに手を上げて、これで全員が揃った。 その後、五分もしないうちに駅前ロータリーに全長八メートルはくだらない長~くデカいピッカピカの車が現れて、それは俺達の前で止まり、中から白髪まじりのダンディーな黒いスーツのおじさんが漫画みたいに登場した。 何て言うの、執事みたいな感じ? ざわざわとどよめきと動揺が広がった。 さすがに皆ざわめく。 だって、リムジンじゃん、これ!! 「おぼっちゃま、お久しぶりでございます。お元気そうで何よりでございます」 ん、おぼっちゃま? 執事風のおじさんは丁寧な身のこなしで会釈する。 「藤巻、久し振り。藤巻こそ元気そうで良かった。送迎頼んで悪いな」 「いえいえ、とんでもございません」 皆の視線は林田とおじさんを行ったり来たり。そう、ダンディーなおじさんは林田と話をしていた。 「ささ、皆様どうぞお乗りください」 藤巻さんはリムジンのドアを開けて、俺達をエスコートしてくれた。 「お前って!おぼっちゃまだったのか!」 永谷がデカい声で突っ込むが、皆一同同じ心境だろう。林田って何者なの!?って興味が湧く。 「林田君すごーい、カッコいいね!」 琴音ちゃんも興奮気味! 瀬名達はあまり派手に驚く様子を見せなかったが、内心ドキドキしているに違いない。 風早は全然驚いた風には見えない。 コイツは林田と付き合っているくらいだから林田の素性を知っているのだろう。 家が金持ちかどうかなんて言おうが言うまいが本人の自由だけど、知らなかった俺と永谷はドンマイって感じだな。 ちょっと寂しい。 それにしたってこれはちょっとしたおぼっちゃまなんかじゃなく、間違い無く大金持ちのお抱え運転手だろう。 後でゆっくり林田を問い詰めようと思いながら、皆それぞれ一言藤巻さんに挨拶して乗り込んだ。 「お邪魔しまーす」 「そこは宜しくお願いしますだろ」 「ひ、ゃっ」 後ろの風早に突っ込まれて乗り込むが、風早の手が俺の腰を掴んで、それがくすぐったくて腰を捩った。

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