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第63話

「世話焼き女房かっての」 風早が言った。 きっと八雲のことを言ってるのだろう。 確かに何だか気になる。 瀬名と八雲はちょっと親密な関係に見えたから。 「羽柴」 風早が一足先に降りて俺に手を伸ばした。 瀬名が見ていないところなのに、 またしてもエスコートするつもりらしい。 風早は俺を見てにこっと爽やかスマイルを披露する。 「……」 八雲のことで悶々としていたけど、風早を見ていたら深く考えるのがバカバカしくなってきた。 瀬名と八雲の関係も今深く追求しなくてもいずれは何なのかわかるはずだ。 必要以上に暗くなるのはやめよう。 うん、やめた。 潮の香りに、波の音まで。 これはもう海が目の前にあるってことだ! 「風早ーっ海だ海ーっっ」 リムジンからジャンプして風早に抱き付く。 おっと、と風早は一瞬体制を崩したけどすぐに俺を抱きかかえた。 「おーっ、羽柴!海だよ海!その前に見ろよ、林田の別荘!」 「え……ここはどこ?」 俺は目を見張り、眼前に広がる光景に圧倒された。 まるで南国へ来たかのような椰子の木が並木道のように道の両端に立ち並び、その先にはハイビスカスの木々。 その向こうには真っ白な洋館が建っている。 もしかして、これ全部林田ん家の持ち物なのか!? 「では皆様、ごゆるりとおくつろぎくださいませ」 藤巻さんは俺達に一礼し、器用にリムジンをUターンさせる。 それを見送りながら俺達も藤巻さんに礼をした。 椰子の木とハイビスカスで南国気分を味わいながら、別荘内に入る。 まずは建物の探索から始まった。 あちこちから感嘆の声が上がる。 そりゃもう、設備も整っていて、とにかく広い。 ベッドが最低二つは置いてある寝室が五部屋。トイレは三カ所。他にはだだっ広いリビングと、オープンキッチン。 食器類や食洗機まで完備してある。そしてめちゃくちゃ広い風呂場にバブルバス機能の付いた浴槽。脱衣場には洗濯機と乾燥機。テレビやゲームなど、一通り生活に必要な物は揃っているように思えた。 これをオフシーズンにも維持するんだろう。相当金がかかりそうだし大変そうだ。 「すっげーな」 リビングの向こうは全面ガラス戸で砂浜が見える。 ウキウキわくわくと心が踊った。 「で、部屋割りはどうするか」 キッチンの引き出しを開けたり閉めたりして何が入っているのか見ていたが、林田の言葉で手が止まる。 部屋割り? あぁ、寝室のことね。 「あたしはあゆみと二人でいいよ~」 琴音ちゃんが先に一部屋キープする。もちろん女子と同じ部屋なんて期待していた奴はいないだろう。誰も異論は唱えない。 「じゃあ俺は羽柴と?」 と永谷。 なんで俺なの、と思ったけど気心しれてるし永谷は面白いからそれでいいかと妥協しようと思った。が、しかし。風早が永谷に何か耳打ちすると、態度を一変させた。 「悪い!やっぱり俺、今日は林田と寝るわ!」 「え、なんでっ」 おい、風早は永谷に何言ったんだ。

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