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第64話

「羽柴は俺と、だろ?」 風早が俺に笑いかける。 あ、まだイチャラブごっこは続いてたのねと、顔が引きつった。 「まあ……。いいよ、誰とでも」 もう、この際誰とでも良い。夜なんて疲れて眠るだけのような気がするから。 「じゃあ、俺も同室にしてくれる?」 「ん?」 突然の横入り。声の主を探す。俺はもう誰の声かわかっていた。よく通る低めの声は瀬名だ。 「……別に俺はいいけど?」 風早は含みを持たせて俺を見る。 俺の返事はどうなんだってところか。 「風早がいいなら俺も……」 「瀬名!瀬名は僕とだろ!」 俺もいいよと言いかけて八雲の声に遮られた。 八雲は眉間にシワを寄せ、瀬名を見上げていた。瀬名の腕を大きく揺さぶって、行かないでと訴えかけているように見える。 「どうする?三人部屋は二部屋あったからこっちとそっちで三人ずつ別れれば丁度いい。こっちは別に瀬名が一緒でも構わない」 風早の言葉に瀬名は頷いた。 「八雲、悪いけど河野達と同室になって。俺はちょっと風早くんに聞きたいことがある」 瀬名のメガネは表情を隠すが、何か神妙な面持ちに感じられ、その空気を悟ったのか河野と冬水田が八雲の説得に当たった。 「瀬名があんなに主張するなんて滅多にないことだよ、八雲。理由はどうあれ譲ってあげたらどうだい?ここは俺達と同室で手を打とうよ」 「俺にはフラグが数本見える……」 冬水田はこっちを見てゴシゴシとわざとらしく目をこする。 それを見て八雲が溜め息をついた。 「ほんと、こんなことにかまけて次の新刊まで落とされると困るんだよ~」 「しょうがないよ。瀬名も必死なんだろう」 話の内容は理解出来なかったが、八雲が異常にぶすっとしているのだけはわかった。でも、それ以上口を開くこともなく、ただ俯いて不機嫌さを露にして見せる。 「あっちは何とか収まったみたいだな。じゃ、部屋に荷物置きに行こうぜ」 「……あぁ」 事情はよく飲み込めないが、取り敢えず丸く収まったんだと思いたい。 部屋割りどうこうで揉めるなんて面倒だ。 「これ羽柴くんの荷物だよね」 そう言って瀬名は俺のスポーツバッグを軽々と持ち上げて、自分の荷物とひとまとめにし肩へ掛ける。 「え、あぁうん。持ってくれる……のか?」 「うん」 「……そう。ありがとう」 気恥ずかしくて瀬名が見れない。そんな俺を見て風早がニヤニヤしていて、意図せず眉毛の辺りがひきつりピクピクと痙攣するように波打った。 俺達は二階にある寝室へ荷物を置き、一度リビングに集まった。 タイムスケジュールを確認する為だ。 日中は完全に自由行動。 夕方はテラスでバーベキュー。 その為、夕刻の五時にはまたこの別荘へ全員集合することとなった。

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