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第66話
「やっぱり、あの時は体だけでも繋がればいいって思ってたけど、羽柴くんの気遣いとか意外にちゃんとしてるところとか、……瀬名君達には少し意地悪だけど、でも本当は優しい人ってわかってるから。そういうの全部まとめて、あたしは羽柴くんのことが好き……です」
自分に好意を寄せてくれてるのを知っていながら、ただやりたいだけでそれを利用した最低な俺に、告白してくれたあゆみちゃん。
……本当に悪いことをしたと思う。だから嘘はつけなかった。
「あゆみちゃん、ごめん。……俺、好きな奴できたんだ」
「うん、何となくわかった。いつも羽柴くんのこと見てたから知ってる」
「……それが誰なのかは追求しないの」
「うーん、それが琴音だったら戦っちゃうかもしれないけど、琴音じゃないんだよね?それに、あたしの好きな人が実は男が好きとか認めたくないし」
「ん?」
「ううん、何でもない。今回の旅行はあたしの傷心旅行のつもりだったの。何となく振られるの覚悟してたし……。風早君なら、羽柴くんとお似合いだと思うよ」
「え?風早!?」
俺の両手に積み上げたピザの箱が驚いて揺れる。
「あぁ、誰にも言わないし。安心してね」
「いや、ち、違う!誤解だよ!?それ」
「もう!今さら隠さなくてもいいじゃない。あたしなんて振られる覚悟の上での玉砕なんだから。これ以上みじめにさせないでよね」
「……や、違うんだけど……」
あゆみちゃんはそれだけ言うと、足早に走り去った。サラダは袋の中、俺の足元に置かれたままで 誤解を解く間はなかった。
ま、いいか。
「……これは腕にかければ全部持てるか?」
足元の袋を拾おうとして手が止まる。永谷が先に拾ったからだ。
「うおっ!おま、居たのかよ!?」
うるさいが代名詞の永谷がこっそりと潜伏したいただなんて驚きだ。
「……話は全部聞いた」
「……つうかお前どこにいたんだよ」
「お前達のすぐ後ろに……」
「嘘。気付かなかった」
「……お前、お前、か、かかかっ、風早のこと、好きだったんだなーーっ!!お、俺、多分、誰にも言わない!けど、応援出来るか微妙 ~!!」
「ち、違う、違うわ、ぼけーっ!」
持っていたピザの箱で永谷の頭をぼこんと叩いた。
これ以上勘違いを増やして堪るか!
しかも何でそんなに興奮してるんだよ~!?声バカでかいし、何なのコイツ!
「え、違うのか?」
「うん、風早が好きなわけじゃない」
「な……なんだ~っ。てっきり俺は羽柴とうとう男に走ったかと思ったわー。ホモじゃなくて良かった~」
「ホモ?」
「うん、ホモ。モーホー、モホッ、モホッ」
「……なにそれ」
「やらないか?」
「だからなにそれ……」
……こいつには絶対瀬名のこと教えられない。
永谷には言わないでおこうと心に誓いを立てた。
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