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第70話

「羽柴君は俺のお姫様だよ」 端正な顔で臆面もなく言ってのけるコイツはもしかして天然のタラシなのかもしれない。 男にお姫様抱って……ないだろ。 そう思いながら、心の隅で特別だと言われているみたいで嬉しい自分がいた。 「ばっ……ばかみてぇ」 やめろよ、恥ずかしい……。 あまりの羞恥に顔が上げられず、結果更に瀬名の逞しい胸に顔を埋めることになってしまった。 力強い腕に抱かれ、羞恥もあったが安心感の方が断然大きい。 生きて戻れて本当によかったと、また、改めて思った。 砂浜から別荘内へ戻ると直ぐ二階の割り振られた寝室へ瀬名が俺を運ぶ。 俺という男一人を横抱きにしたまま平然と階段を上がる重さを微塵も感じさせない力強い足取りが、胸の奥を甘く甘く、疼かせる。 部屋へ入ると腫れ物にでも触るかのように、そっとベッドに下ろされた。 好き……。瀬名、好き……。大好き……。 俺はちゃんとその言葉を伝えなきゃいけない。 「瀬名、ありがとう。……いつも助けてくれて。本当にヤバい時に助けてくれるから……」 俺はどうしようもなくドキドキする。 恥ずかしくてこの言葉は飲み込んでしまった。 「……うん」 「それで……俺、気付いたことがあって……って言うのは、自分の気持ちに気付いたってことなんだけど」 俺は瀬名のことが…… そう続けようとした時、ハクションッ、と瀬名が大きなくしゃみをした。 「あ、瀬名!先に着替えろよ!風邪ひくぞ」 海水で衣服が濡れて素肌に張り付き、クーラーの効いた室内ではきっと寒いはずだ。 瀬名は俺の顔を見て、くすっと笑うと「ほんとだ」と言った。 「羽柴君も肌冷たくなってる。早く着替えた方がいい」 「……あ、うん」 「着替え、手伝ってあげようか?」 瀬名が濡れたシャツを脱ぎ捨てて言う。瀬名のきれいに筋肉のついた身体が目の端に止まり、途端に自分の身体の奥が疼くのを感じた。 無意識に俺は膝頭を合わせ、股間を隠すように膝を立てた。 瀬名がこっちへ向き直し、俺は黙って瀬名を見詰めた。 触れたい、触れられたい。そんな事で頭がいっぱいになってしまう俺はどこかおかしい。 「せな……」 「…そんな目で見つめられたら我慢出来なくなるよ」 「我慢、しなくていいよ」 俺の言葉を合図に、瀬名は俺を優しく押し倒す。 俺を見下ろす瀬名の顔が最高にカッコよくて。 あぁ、やっぱり。俺はこの男が好きなんだ。そんな想いが一気に胸に広がった。 瀬名がゆっくりと俺に覆いかぶさって、唇が額にこめかみに落とされる。 くすぐったさが気持よくて肩を震わせると、男らしい肉感のある唇で俺の小さな口が塞がれた。 「はッ……ふ……ん……」 何だかいつもと違う気がした。ぬるっと舌が優しく侵入する。 上顎をくすぐるように舌先で舐め、歯列を確かめるように蠢く。 キス一つで全身が痺れるみたいに、すごく感じた。 「んッ、んっ……」 あぁ、どうしよう。本当に我慢出来なくなってきた。中心はもう完全に勃起して痛いくらいに張りつめてる。 擦りたい。瀬名と気持いいキスしながら、擦っていっぱい精液を出しちゃいたい。 俺の手が勝手に動いて水着の上から勃起したそこをそろそろと撫でる。 「まだ、だめ」 いつの間にか瀬名にその悪戯な手を取られ、頭上のシーツに瀬名の手で縫い付けられた。 「や、だっ、触りたいっ、ちんこ、こすりたい……」 「羽柴君、可愛い。もうちょっと我慢、ね?」 「やぁッ……」 瀬名の頭は少しずつ下がり、首筋を、鎖骨をキツく吸い上げた。 「っ……」

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