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第76話
「これ、この繋ぎ方で風早君と繋いでたよね」
そう言った瀬名の手にぐっと力が篭もる。
確かに風早は瀬名を煽るためか、この繋ぎ方で俺と手を繋いだ。
でも、全然違う。
風早と瀬名とじゃ肌質や体温、手の大きさまで、繋いでる感覚が全然違う。
風早とじゃドキドキもしない。
なのにそんなことを気にする瀬名が可愛らしい。
「それってもしかして、ヤキモチ?」
「……そうみたいだ」
「はは、瀬名かわいいのな」
「……」
瀬名を見ると眼鏡の下、頬が僅かに赤い。赤面してるのかもしれない。やっぱり可愛いと思った。
「俺は少し勘違いしてた。風早君と羽柴君は付き合ってるんだと思った。でも違ってた。風早君ていい人だね」
「うん、林田も、永谷も」
「うん、そうだね。風早君は煮え切らない俺を焚き付けてくれた。風早君に羽柴君と付き合ってるのか聞いたら、自分で羽柴君に確かめろって……。で、風早君が羽柴君の腰骨の所に可愛い黒子があるって意味深に言うから……、俺は何度も羽柴君の裸を見てるからそんなの無いってわかってた筈なのに、昨日はそれがどうにも気になって、結局海のいえ『ミルキーハウス』に行かずに戻ってきちゃったんだ」
「腰骨に黒子?あいつそんなこと言ったのか。適当なこと言いやがって。……でもそのおかげで、俺はまた瀬名に助けられた。今回は命を救ってもらって本当に感謝してる。ありがと、瀬名」
「俺はこれからも羽柴君を助けるよ」
瀬名が頷きながら言った。
うわぁ……。
何だか恥ずかしくて、瀬名を直視できない。
あ、そうだ。
「な、瀬名、眼鏡外してよ。俺、瀬名の顔好きなんだ」
はにかみながら瀬名を見上げる。
「う、そんな可愛い顔で言われたら外すしかないよね」
「それダテ眼鏡だろ?」
「まあ、そんなとこ」
「何で顔隠すの、せっかく超~イケメンなのにさ」
「……俺はももにゃんが大好きなオタクだから。ね、俺のももにゃん」
「ももにゃんじゃねぇよ、ともにゃんだにゃん」
俺がそう言うと瀬名はアハハと声をたてて笑った。
***後日談***
「なぁ、何で俺をももにゃんって呼ぶの?」
「あの雷の日、羽柴君が雷に怯えてる子猫みたいだったから。羽柴君に萌を感じたんだよ」
「萌って、萌え~ってやつ?」
「そう、それ」
「ふーん?で、どれ?」
何だか会話が噛み合わないがいつもの事なので気にしないでおく。
今日は瀬名の家で、例の自費出版しているという漫画を見せてもらった。
「はい、これが夏に新刊落として無理矢理出したコピー本」
「お、おおう!確かに自費出版って感じだな!っつうか、表紙!エロい!ヤバい!八雲天才!?」
カラーのももにゃんが両手でおっぱいを隠し、手ブラしている。
ホチキスで留めてある非常に薄い本だった。
初めて見るお手製の漫画にちょっぴり興奮してページを捲った。
ちょ、あ、え!?え、えろ、エロい! ももにゃんエロ過ぎ!!
……ん
………ちょっと待てよ。
ももにゃんに何で付いてるの、ちんこが!
あれ、しかも、何かこのプレイ……。オナニー強要。どこかで……。
「なぁ、このももにゃんのプレイって、もしかして……つうか、ちんこ付いてるし」
「気付いた?羽柴君にそっくりでしょ!?喘ぎ方とか、この体位!泣きながらしてくれたじゃない。ほんともう、この本で羽柴君思い出して俺のオカズになった時期があったんだよねぇ。あ、これはふたなりといってね、男も女も楽しめちゃう身体なんだけど、羽柴君にもあそ……」
ガツッ!
これ以上語らせたら危険だ。聞きたくない!!
瀬名がふらりと後ろへ倒れる。
俺の頭突きが決まったぜ……!
end
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