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その手を繋いで

「中間テストかぁ……。夏休み明けるとすぐにこれだもんな、正に天国から地獄って感じだな。あ、こないだ行ったミルキーハウス載ってるよ。店員のコスレベル高かったよなぁ」 発売したばかりのアニメ雑誌アニこれ!をパラパラと捲りながら河野の喋りに適当に相槌を打つ。 夏休みを終えて二学期が始まった。 あの旅行から俺と羽柴君は晴れて恋人同士となった訳だが。 相変わらず羽柴君は風早君達と連んでいる。 旅行を終えて気付いたが、彼らは俺達の関係に偏見など持っていないように思えた。永谷君だけは酷く驚いていたが。 それでも応援してくれているのがわかって、馬が合わないと思っていた彼らも悪い奴らじゃないとわかった。 河野や冬水田には俺の口から羽柴くんとの関係を伝えた。 何となく二人とも気付いていたそうだ。だからさほど驚いた様子はなかった。 冬水田に限っては腐男子という名のボーイズラブ愛好家のため大いに祝福してくれた。 八雲は最初こそ反対していたが今では見守ってくれている。 冬水田の影響だが、俺もボーイズラブは一つの読み物としては嫌いじゃない。 まさか現実に自分がボーイズラブするとは考えてもいなかっけど。 分厚いメガネ越しに羽柴君を見る。 相変わらず羽柴君の周りには人が溢れていた。 男女問わず分け隔てなくキラキラスマイルを振り撒いて……。 「……!?」 俺はガタンと音を立てて立ち上がった。 「どうした瀬名?」 「あ、いや、ちょっと……」 俺のともにゃんが……、と喉元まで出かかった言葉を寸止めする。 羽柴君ってあんなにキラキラしてたっけ?いやキラキラというか、もわもわというか。周囲の人間がデレデレしているように見えるが、気のせいか!? あ、あんなに可愛い笑顔をあちこちに振り撒いてどうするつもり!? 居ても立ってもいられなくなり、俺は瓶底メガネをぐいっと上げて羽柴君のもとへ向かった。 羽柴君は俺に気付き、こっちに顔を向けた。 きょとんとした顔が可愛すぎる……! 「羽柴君、今度の日直のことで、ちょっといいかな」 しん……と一瞬辺りが静まり返った。 訳もないだろう。羽柴君はオタクの俺を嫌っているとみんな思っているのだから。 「やー、今日席替えすんじゃん!瀬名!日直なんてもう羽柴とは当たんねぇって!」 「……!!」 バシン!と永谷君が俺の背中を叩く。結構な力だ。 「そ……そうか……」 そうだった。席替え……するんだった。 キラキラの羽柴君を連れ出したくてジャンルの違う群れに首を突っ込んでしまったが、羽柴君奪還は失敗に終わってしまった。 仕方無く席に戻ろうとしたその時、クイクイと制服の袖を引っ張られた。 「待った」 羽柴君だ。ちょっとごめんねとグループから抜け出した羽柴君は、さり気なく俺の腕を引いて教室を出る。

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