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第78話
ふわっと羽柴君から甘い香りが立ち上る。
「羽柴君の香水?いい匂いがするね」
「香水?つけてないけど。何だ?俺匂う?」
「……甘い香りが」
「ふーん?」
気にする風でもなく羽柴君はどんどん歩く。
はっとした。
これってもしや、フェロモン!? 何、この子猫ちゃん発情期なの!? ……心配だ。
元々可愛らしい顔立ちの羽柴君は女子だけで なく、一部の男子からも人気があることを知っている。
男も女も問わない節操なしな人間は結構いるということだ。
オタク系の奴らからはそんな情報も流れてくる。
「よし、この辺なら落ち着いて話せるかな」
人気のない非常階段。
昼間でも薄暗く、近付く者はあまりいない。
「で、瀬名どうした?俺に何か話あるんだろ?」
羽柴君の上目遣いに首を傾げる姿が、二次元美少女ももにゃんと被る。可愛い。すごく、すごく可愛い。今すぐここで犯したいくらいだ。
「話なんてないんだけど……」
たまらず俺は羽柴君を抱きすくめた。
「わっ、どうしたんだよ瀬名。ここ学校だぞ」
離せよと身を捩る羽柴君。
ふにゃんとした抵抗がまた俺の男を刺激してくれる。くねった腰をぐっと引き寄せてスラックスの上から羽柴君の尻朶を鷲掴みにした。
「ば、ばかっ、瀬名!いい加減にしろっ!」
「わかってる、でも羽柴君が可愛いのが悪い」
「え、瀬名、ちょっとやめっ……」
羽柴君のお尻は女の子みたいに柔らかくはないが適度に弾力があって若干丸みを帯びている。俺の手は止まることを知らず、鷲掴みにした尻朶をそのままやわやわと揉み始めた。
「や、やだって、おいっ、変態っ!」
「いっ~~~っ!!」
ズダン!!と非常階段に音が響き渡る。勢い良く足の甲を踏み潰されたのだ。
俺の足から火が噴いたかと思う程の痛烈な痛みだ。
それもまた愛しのともにゃんからだと思えば、こんな痛みナンテコトナイ……(泣)
「瀬名、学校で盛んなよ。バカ。今日帰り寄るからそれでいいだろ?」
「はい……」
泣くほど痛いけど、泣くほど嬉しい!
羽柴君を独り占めするのは久し振りだ。俺は大人しく頷いた。
その後の授業の一つ一つがそれはそれは長く長く感じられ、やっとお待ちかねの放課後を迎えた。
一足先に家へ帰り、特に散らかっている訳ではないがざっと片付けて掃除機をかけた。
恋人を待つって感覚がそわそわする。
何かいい……!
掃除機の後、ラグマットに粘着クリーナーのコロコロを滑らせて、ハンディモップでそこら一帯の目に見える埃をキャッチする。
仕上げに石鹸の香りがする除菌消臭スプレーを振り撒いて、取り敢えず辺りを見渡した。
よし。
一仕事終えた俺は落ち着かない体をリビングのソファへと沈めた。
ここに羽柴君がやってくる。
既に頭の中は羽柴君一色で埋め尽くされている。
羽柴君とはハッキリ言ってプラトニックな関係ではない。
だから容易に羽柴君の痴態を思い浮かべることが出来る。
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