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第4話
土曜日になり、蒼介に指定されたバーに向かって歩いていた。
蒼介のお願いとは、合コンの人数合わせだった。五対五でセッティングされていたが、一人が急遽、出張になってしまったのだという。
見積書でのお買い上げを条件に、樹はそのお願いを承諾した。
まさか、樹がゲイであるとは思っていない蒼介は、
「いい子いたらお持ち帰りしてもいいから」
と、悪戯っ子のような顔をしていた。
女性に興味ないので大丈夫です、などど言えるはずもなく、笑って誤魔化した。
指定された店に行くと、個室に案内された。中に入ると、樹に気付いた蒼介が手を挙げた。
初めて見るつなぎ姿ではない蒼介は、薄いブルーのポロシャツ姿。露わになっている首筋が妙に色っぽく見えた。
「水無瀬樹くんです。イケメンでしょ?」
蒼介に紹介され、樹は顔を赤くしながら頭を下げる。
合コンらしく席は男女交互になっており、蒼介は目の前の席に座っていた。
人見知りの樹は、終始女性たちに翻弄された。
「水無瀬くんって、年いくつ?」
隣の女性に聞かれ、
「24です」
「わっかーい」
「蒼介さんたちは、いくつなんですか?」
そう言えば、年を知らないと思った。
「オレ?つーか、ここみんな三十歳」
もっと若いかと思った樹は、少し目を丸くした。
「あ、今結構オッサンだと思ったでしょ?」
「いえ……少し」
そう言うと、このヤロー、と蒼介の手が伸び頭をクシャリとされた。
樹はずっと目の前の蒼介を目で追っていた。ムードメーカーらしい蒼介は、いつも穏やかに笑い、優しい人柄が現れているのか、周囲に気を使っているのがわかった。樹の人見知りを察知したのか、蒼介が樹にさりげなく気を使ってくれているのを感じた。
(優しい人だ……)
その優しさに、樹の心が解れる。
結局、二次会まで付き合わされ、三次会にも誘われたがさすがに断った。
「じゃあ、オレも帰るわー。悪いんだけど、水無瀬くん、送ってってよ」
「いいですけど、三次会いいんですか?」
「うん、いいや。もう眠い」
そう言って、大きく欠伸をした。
「スーツじゃないと、なんか新鮮」
コインパーキングまでの道を、並んで歩いていると不意に言われた。
「かわいい」
頭をクシャリとされ、条件反射で思わず目を瞑ると、真っ赤になった顔を暫く上げる事ができなかった。
車に乗り込むと、
「会社に迎えば?」
「いや、オレ一人暮らししてるから、家あそこじゃないんだ」
実家から少し離れた所で、アパートを借りているという。
アパートに着くと、
「家寄りなよ」
そう言われた。
「え?でも……」
「水無瀬くんと話がしたいんだよ」
いつもと違う真剣な眼差しを向けられた。
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