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第12話
正明は夢を見た。
兄、晃明に善久との事を話している夢だった。
「悪ィな、正明。俺のせいでお前に迷惑かけちまって」
何もない、真っ暗な空間に、白いシャツと白いパンツ姿の晃明が申し訳そうな表情を浮かべて立っている。
「お兄ちゃん、困るよ。僕、お兄ちゃんじゃないのに…」
正明は、今の素直な思いを吐露していた。
「そうだよな。ヨシの気持ち、俺全然分かってなかった。アイツがあんな風に俺の事思ってたなんて知らなかった…」
今まで見たことのない、暗い表情の晃明に、正明は何も言えなかった。
「俺はもう、ヨシの願いを叶えてやれない。アイツの傍にいる事はできても、アイツに触れることも触れさせることもできないんだ。許してくれ、正明…」
正明に深々と頭を下げると、晃明は突然現れた光の中に吸い込まれていく。
「お兄ちゃん、待って!行かないで!!お兄ちゃん!!!」
正明は離れていく兄を必死で追いかけているうちに目が覚めた。
「夢…だったの…?」
夢にしてはリアルだった。
正明の目には涙が溢れていた。
「…ここ、どこだろう…」
涙を拭うと、見慣れない天井が目に入る。
起き上がろうとするが、腰に痛みが走り、動けなかった。
「無理に動かない方が良いですよ、正明くん」
そこに、黒のボタンシャツにジーンズ姿の善久が現れる。
「ヨシさん…」
「ここは私の家です。君が気を失ってしまった事で私は我に返りました。大変な事をしてしまい、申し訳ありません。生徒に言い寄られている君の姿を見た時、君が晃明先輩にしか見えなくて…」
申し訳なさそうに言う善久。
いつもの優しい善久だと、正明は思った。
「ヨシさんは、本当にお兄ちゃんのことが大好きだったんですね…」
正明が尋ねるように言うと、善久は『ええ』とすぐに答えた。
「高校に入学して、水泳部で初めて会った時、先輩は緊張していた私に笑顔で気さくに話しかけてくださいました。あの時の笑顔、今もずっと覚えています。その笑顔に私は惹かれました。私の中に今まで感じた事のない感情が沸き起こったんです。それからずっと、晃明先輩の事だけを想って生きてきました。嫌われるのが怖くて、この気持ちを伝えられませんでした。とても後悔しています…」
善久の表情がだんだん曇っていく。
「君には関係のない事なのに巻き込んでしまい、申し訳ない限りです。……ですが私は…先輩にそっくりの君が私以外の人間に触れることなど受け入れられない……」
「え……っ!?」
身体が自由に動かせない正明を、善久は背後に回って抱きしめ、首筋にキスをする。
「誠先輩には式の後で急に熱が出たと言って今日の練習には行けない旨を伝えています。明日は休日ですから、今日はこのまま私の家にいて下さい」
耳元で囁く善久の声は、優しさの中にそれとは相反する感情がこもっているように正明には感じられた。
(ヨシさん…)
兄にとって、善久は大切な人。
正明にとっても、ひとりぼっちになった自分を支えてくれる大切な人。
けれど、決して自分のことを愛することはない人。
自分を必要としているのは、大好きだった兄に似ているからであり、兄の代わりでしかないということ。
(それでも…僕はお兄ちゃんの代わりになれるなら…)
正明は、善久の腕に自らの腕を絡めた。
「正明くん……?」
「分かりました、お言葉に甘えさせていただきます……」
この気持ちをどう表現していいか分からない。
正明はこの先もきっと同じだろうと思い、考えないことにした。
(ヨシさんが幸せならいいや……)
目を閉じると、だんだん眠くなってくる。
正明は善久に身体を預け、眠りについた。
目が覚めると、朝になっていた。
「ん……っ…」
正明は起き上がり、伸びをする。
腰の痛みはまだ少しあるものの、動くことはできた。
「おはようございます、正明くん」
広いワンフロアの部屋。
その少し離れたところに善久がいて、正明に気づき、声をかけてくる。
「おはようございます…」
正明は善久のものと思われるTシャツに下着姿で、善久も白いTシャツにグレーのハーフパンツ姿というラフな格好だった。
「体はもう大丈夫の様ですね。これからランニングに行こうと思っていましたが、どうですか?行くなら下に履くものをお貸しします」
「あ…はい…行きます……」
まだ頭がぼーっとしていたこともあり、正明は体を動かしたいと思った。
善久からハーフパンツを借りると、正明は善久と一緒にランニングをした。
走っていると、水に入りたいと思うようになった。
心がモヤモヤしている時、正明は泳ぐことでそれは洗い流せるような気がしていたからだ。
2キロほど走ると、正明は善久の自宅に戻っていた。
「大丈夫ですか?」
「はい…もう大丈夫です…」
メガネをしていない善久は、拓哉に少し似ている気がした。
(あぁ、拓哉くんに会ったら謝らないと…)
何も言わずいきなり休んでしまったので、次に会う時に話せるか、正明は少し不安になった。
「私はこれからシャワーに入りますが、正明くんも入りませんか?」
「あ…じゃあ僕はヨシさんの後に入ってもいいですか?」
「いえ、一緒に入りましょう。着替え、私のですが準備しますので」
正明の頭を撫でながら言う善久。
優しく丁寧な口調の中に、今までとは違う、強気で怖いくらいの善久がいた。
もう、今までの関係ではないことを、正明は思い知らされた。
ひとりで使うには広いバスルームに、善久が案内してくれる。
「着ているものはこちらに入れて下さい。下着も新しいものを買ってきましたから一緒に入れて下さいね」
「はい…」
言われるがまま、正明は着ているものを善久に言われた籠の中に入れ、バスルームの中に入った。
善久と向かい合うように立ち、シャワーを浴びる。
照明で照らされた善久の身体は、スーツを着ている時では分からないくらい筋肉質だった。
正明もそれなりに筋肉はついていたが、体質なのかあまりがっしりとした身体ではなかった。
(ヨシさんの体…すごくキレイ…)
顔同様に少し日焼けしているギリシャ彫刻像のような善久の身体に、正明はドキドキしていた。
「…どうかしましたか…?」
「あ…いえ…別に…」
「…君の身体、高校時代の…水泳部だった頃の晃明先輩に似ています…」
「ひぁ…っ…!!」
スポンジにボディソープをつけると、善久はそれで正明の乳首を刺激する。
突然の刺激に、正明は倒れそうになった。
「先輩、プールの温度が少し低めだとこんな風に乳首勃っていたんですよね。一度でいいから触ってみたかったです…」
「はぁ…っ…んやぁっ…!!」
善久はスポンジでなく、直に乳首に触れてくる。
爪先でぐりぐりと強めにいじられ、正明はその快感に酔いしれていた。
(あぁっ…何これ…っ…乳首いじられるのってこんなに気持ちいいの…っ…?)
正明は立っていられなくなり、善久の広くて厚い胸板にもたれかかっていた。
すると、自然に下半身が触れ合い、善久の昂りを感じてしまう。
(ヨシさんの…熱くなってる…っ…)
善久の様子に、正明は身体が熱くなっていくのを感じた。
「正明くん、今度は私の体を洗って下さい」
「あ…はい…っ…」
何事もなかったように言う善久だが、正明の乳首に刺激を与え続けていた。
正明は逆らうことも出来ず、身体を震わせながら善久の身体を洗っていく。
広い背中は対面ではできなさそうだったので背後に回ろうとすると、善久が正明の背後に回った。
「背中は自分でやります。それよりも…ここをお願いします…」
「ひゃあ…っ…!!」
善久は堅くなっている自らのモノを泡のついた正明の大股の間に挿れ、腰を動かし始めた。
善久の動きで正明のモノと擦れ合い、正明は更なる快感に襲われる。
(あぁっ…これすごい…っ…!すごく気持ちいいよぉ…っ…!!)
正明も善久の動きに合わせて腰を動かしてしまっていた。
「君のその姿、すごくいやらしいですよ。正明くん、私だけにこの姿、見せてくださいね…」
「はぁっ…ダメぇっ…!!」
善久は正明の耳元で囁きながら、弄っていた乳首を強く摘む。
正明はあまりの快感に耐えられず、射精してしまった。
程なくして、善久も正明の両脚の間で射精し、正明の大股を熱く濡らした。
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