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第10話

圭から隼人の警備会社に直接電話があったのはそれから数日後だった、それほど遅い時間ではなかったが社内には隼人しかいなかった。 圭は短く「伝えたいことがある」とだけ言った。 「今からか?」 隼人は時計を見た。 「わかったことを報告したい。間島や佐久間がいないところで」 「なんで?」 「それも含めて話したい。日中だったら、お前、仕事で時間とれないだろ」 それもそうだと思った。 「俺んちに来てくれよ」と圭は言った。「そこから遠くないし、食材も買ってあるから」 「俺に、飯作れって言うのか?」 「どうせ、これから夕飯だろ。一緒に作って食べたら、楽しいよ」 「消化不良になりそうだ」 そう言い返したが、隼人は圭の指示通り、彼のマンションに向かったのだ。 来てくれと呼び出された圭の家は、駅前立地のタワーマンションで、かなり金がかかりそうな物件だった。 圭のようなフリーランスの探偵が買えるような家ではないと思った。誰かと一緒にくらしているのか。彼が嫌っていた父親が金を出しているのか、他にパトロンがいるのか。 郵便受けに、狭霧の名前はなかった。 エントランスのインターフォンで教えられた部屋番号を押すと圭の声がした。 「どうぞ」 オートロックがあき、エレベーターホールへのドアが開かれた。 圭の部屋は、最上階だった。広々としたリビングにキッチン。大きな窓からは都会の夜景が広がる。これだけでも贅沢な空間だった。 「金がないとか言うのは噓だったんだな」 「え?金の件は、本当だよ」 「こんな立派な家に住んでて、かよ」 「ここは、俺んちじゃない。俺が住んではいるけど金払って買ったのは俺じゃない」 隼人は、立ち入ったことを聞きたい気持ちをぐっと抑える。金を出したのは誰で、その人物と圭との関係はなんだ。 だけど、圭はもう高校生ではなく、大人だ。彼にパトロンがいようが、どんな仕事をしていようが、隼人には関わりのないことだ。

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