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第15話

金曜日の夜遅くに、圭から隼人に再度の連絡があった。 「明日の昼、会えないか?報告することがあるから」 隼人は、スケジュールを確認する。土曜日は仕事する予定だったが急ぎの仕事は少ない。 午後なら時間もとれるだろう。 「わかった。俺にも、クライアントのNPO法人の情報が少しはある」 「また、うちに来てもらってもいいかな。昼食、用意しとくから」と圭は言った。「たいしたものじゃないけど」 隼人は了解した。また、料理しろと言われるのかと思ったが、今度は自分で作るのだろうか。それともデリバリーでもするのか。 高校の時、隼人が圭と一緒に食事を作るようになったのは、6月の末ごろだ。ある時、圭は、一週間ほど無断で学校に来なかった。 心配になって夕方に家を訪れた。圭の家に行くのは初めてだった。 友人たちには、いい加減放っておけと忠告されていた。 狭霧はやる気もないし、世話しても無駄足だ。お前のこと軽く見てるんだ。行くとさらにつけあがるぞ、云々。 忠告は真実をついており、隼人は十分理解していたが、足が圭の家にむいていたのだ。 先生に教えてもらった圭の住所は、住宅地にあるマンションだった。 インターフォンを押したら、母親か誰かが返事をすると思って緊張していたが、誰の返事もなかった。 しばらくして、もう一度押すと、「誰?」というかすれた声が返ってきた。圭だった。 名乗ると、間が開いて、オートロックが解除された。 マンションの家は、広い間取りだったが、空気はよどみ、全てがごった返していた。荒らされたのかと思うくらい衣類やゴミが散らかり放題だ。 キッチンは、カップ麺やパン、スナック菓子などのごみがそこら中に散らばっていた。荒らされたのではない。この家の住民は、全員片付けないままでいるのだろうか。 「圭?」 家の中の部屋を覗いて、圭をさがした。 リビングのインターフォンの近くで、圭が座り込んでいた。目を閉じている。 「どうしたんだ?」 あせって手を伸ばした。 圭は目をあけた。この家の空気と同じくらいどんよりしている。 「風邪ひいちゃって、休憩してるとこ」と彼は言った。 いつもの生意気な口調は影を潜め、声は小さい。 「休憩って、お前、一人なのか?」 「うん」 圭は、その場でズルズルと上体を倒し、横になろうとしている。 「熱があるのか?」 額に触れたが、高い熱はない。 「もう、ない。お腹すいてるだけ」 「腹減ってるって、お前。飯は?食ってないのか?」 圭は、かすかに首を横に振った。 「救急車呼ぶか?」 圭は微かに唇をとがらした。いつもの生意気な様子が、わずかに顔に出る。 「大袈裟だな。大丈夫。休んで、エナジードリンク飲んだらよくなる」 言い返せるくらいだから、確かに、救急車をよぶほどではないのだろう。 隼人は、家の中を歩き回って、毛布をみつけ、とりあえず圭にかけた。

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