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第16話

そして、キッチンに行き、冷蔵庫をあける。何も入っていない。 棚を開けて探すが、どこにも食料になりそうなものはなかった。 「圭、なんか食うもの買ってきてやるから、まってろよ」 そう言って、家をでた。 すぐ近所にあるミニスーパーに行き、食材を買い、急いで家にもどる。圭は、毛布をかぶって座っていた。 やつれた顔の大きな目で隼人を見ている。 「金、払うよ」 「金」隼人はため息をついた。「金のことなんてどうでもいい。今作るから、待ってろ」 キッチンを簡単に片づけて、さっさと、野菜を切り、お粥を炊いた。 一通りできると、圭を呼びにリビングに行く。 「立てるか?」 「うん」 圭はのろのろと立ち上がった。 「いい匂い」と彼は言った。「なに?」 「スープとお粥だ」 圭は、キッチンのテーブルを見た。器の中を覗き込んでいる。 「味はないけど、身体にはやさしいから、無理のない範囲で食べろよ」 圭は、椅子に座り、スプーンを手に取る。手も、痩せてしまったように細い。 一口、二口食べて、圭は顔をあげた。「美味しい。これ、どこで売ってるの?」 「今、作ったんだ。まだあるから、ゆっくり食べたらいい」 「作った?隼人、料理できるんだ」 隼人はうなずいた。 「うちは共働きで、弟と妹がいるんだ。時間があるときは、食事は俺が作ってる」 圭は、時間をかけて味わって食べていた。白い肌にかすかに血の気がさしてくる。 食べ終わるまで待ち、隼人は言った。「病院行くか?」 「いい」 「薬は?」 「飲む」 キッチンのテーブルの上には、処方薬があった。いつかはわからないが、病院には行ったのだろう。 圭に水と薬をわたし、飲みこむのを見た。 「寝る?」 「うん」 圭は立ち上がった。 彼が奥の部屋に行くの後を隼人もついていく。ベッドルームも他の部屋と同じで、ごった返していた。 圭はベッドに横になり、丸くなる。それから隼人を見上げてきた。 「帰るのか?」 大きな黒い目が濡れているようにみえた。弟や妹が泣きだす前みたいな、涙のたまった瞳だ。 隼人は首を横に振った。 「ここにいる。大丈夫だから、寝てろよ」 圭は、目を閉じた。 しばらくすると、彼は眠った。寝顔の眉間にしわが寄っていた。

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