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第21話

キッチンの大きめのダイニングテーブルの椅子を勧められ、圭は隼人に大きなガラスのグラスで、氷の入った冷たい水をだしてくれた。 キッチンで、南川と圭が、二人で料理を作っている。並んでいる背中をダイニングテーブルから隼人はみた。 南川はミートソースを作り、パスタをゆでている。圭は、隣でそれを手伝ったり、果物や野菜を切ったり、スープを作ったりしていた。 二人は時々話をしている。隼人の知らない世間話だ。 かなり、親しいのだろう。 いや、親しいという言葉は適切じゃないな。 圭の恋人だ。 高校生の時、圭は男とも女とも付き合うのだと公言していた。言い寄られて、嫌いじゃなければこばまないと言っていたことがある。 南川は、優しそうな男だった。 圭は、笑顔で、機嫌がいい。 ふと、南川のたくましい身体が、圭をベッドで抱いている光景が頭に浮かんだ。白い肢体をさらして、蠱惑的な笑みを浮かべた圭の腕が、南川の背中に回っている。 何考えてんだ、とかなりあせり、目の前の水を飲んで、頭の中を打ち消した。 食事が整い、ミートソーススパゲッティを食べはじめた。 「まあまあだな」と圭は口に入れて言った。 「狭霧の料理の点数はいつも辛いな」と南川は言うが声はうれしそうだ。 「隼人の方が料理は上手いよ」と圭はいった。 「そうですか?」と南川が隼人に質問してくる。「得意料理はなんですか?私はいつも同じものしか作れないんですよ。狭霧に、レシピ見ろって言われるんですけど、それも面倒でね」 「得意って程のものはないです」と隼人は答えた。 「隼人は料理、なんでも作れるからな」と圭が自分の能力でもないのに自慢している。 南川はにこやかだった。 「大内さんは、狭霧と高校が一緒だったんでしたね」 そういう話もしているのだ、と隼人は思った。 「そうです」と隼人は答えた。 圭もうなずいている。「俺は一年くらいで転校しちゃったけど、私立の男子校でさ、俺が入った頃に進学実績上げようとしてて、勉強とか規則とかうるさかったよ。今はどうなのかな。隼人は、卒業した後で、学校に行くことある?」 「同窓会とかな」と隼人は答えた。 「隼人、友達多かったからな」と圭は言った。「いつも、ぞろぞろ仲間がいたよな。仲間って言うか、取り巻き。俺が3年生の隼人の教室行くと、何の用だよ、みたいな感じに言われた」 「そんなことあったのか」知らなかった。 「だろうな。隼人から俺を遠ざけようとしてる奴らがいたんだよ」圭は面白そうに言った。 「今から思えば、連中の気持ちはわかるけどな」 「どうしてだ?」と南川が聞いている。 「俺は、さぼってばっかりいる不良の問題児で、優等生の隼人を汚染されたくなかったんじゃないの」 高校の話をこんな風に圭から聞くことになるとは思わなかった。

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