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第22話

食事が終わったら「仕事の話をしても?」と圭は隼人と南川に言った。 そして、隼人の戸惑った顔に気づいて補足する。 「そうだった。隼人、南川は、俺と同じで探偵業してるんだ。というか、俺が間島のところの仕事や南川の仕事受けてる感じ。今回は、俺が頼んで隼人の仕事も少しだけ手伝ってもらってる」 「もともと、狭霧に探偵業務の仕事を紹介したのは私なんですよ」と南川は言った。「まあ、言ってみれば、ジェダイマスターみたいなものですかね」 「なにがジェダイマスターだよ。たいしたこと教わってない」と圭はふざけた口調で言った。「で、今日は、自称、マスター・南川にも来てもらったんだ。その方が話が早いと思って」冗談も親しげだ。 南川は優しそうな笑顔を圭に向けている。 圭は、立ち上がり、書類のファイルを持ってくる。 大きく印刷された写真を何枚か差し出した。 「やっととれた店内のヤバい写真」 荒い画像は、カーテンが引かれた隙間から撮影されたものだ。 ビニール袋に白やピンクの錠剤が入っているのが、かすかにわかる。瓶に入った液体もある。 数人が、部屋にはいそうだが、顔はわからない。 「この錠剤は?」 「多分、ドラッグ。確実じゃないからまだ、犯罪の証拠とまではいかないけどな。この写真だけだったら、ラムネですって言われても通っちゃうから、もう少し証拠を探す」 「それにしても、よく撮影できたな」感心した。 圭は褒められた子どものように嬉しそうにうなずく。「昼夜関係なく張り込んでたから。これくらいの成果は当然だ。それに、最近のカメラって性能がめちゃくちゃいいし、撮影した後の処理も、素人でも簡単にできるツールがいっぱいあるから」 さらに、別な写真を出す。ノートPCの画面だ。文字がぼんやりしていて、意味はよくわからない。 「今、知り合いのネットオタクに、店の中のPCをハッキングできないか頼んでる。うまくすれば、このPCの中身もわかると思う」 南川は、別な資料を出してきた。店の乗っ取りをした塚田という男の写真だった。 「塚田忠弘、黙打会系の三次団体五十井興業の組員だ。五十井組長がどこからか拾ってきた男で、身元は不明。いつのまにか組の金の世話をすることになったくらいだから、有能なんだろうな。五十井興業の関係者に聞いたが、塚田は、大陸系の連中と親しくて、もしかすると、大陸系マフィアのために働いていて、五十井を利用してるだけじゃないかってことだ。この店にいる若い衆たちは、塚田が声をかけて五十井興業に出入りしているチンピラらしい。盃事していないから、組員でもないが、なにかあれば、五十井が刺されるから、面倒だということだ」 「塚田は、五十井興業も乗っ取ろうとしているってことなのか?」と圭が聞いた。 「隠れ蓑にしてるってことだろう。この店以外にも、ドラッグの卸の場所をいくつか持っているらしい。どの程度手を広げているかは、五十井組長も知らないんじゃないかってことだ」 南川は、五十井組長の写真をみせてくれた。かなり年配の男だ。 「数年前まで金に困ってた。今はかなり羽振りがいい。塚田が金儲けしてくれれば、なんでもいいんだろう」 「今回の依頼は、犯罪の証拠をつかめばいいということでしたね」と南川は隼人に質問した。 「そうです。依頼内容は。ですが、なぜそんな依頼をしてきたのか、目的はわかりません」 それから、隼人は、NPO法人の住所にいくつも他の団体がいることを2人に話した。 「そのNPO法人のある場所に行ってみるか?」と圭が言った。「どんなところかわかれば、正体や背景までは難しくても、なにかわかるかも」さらに圭は時計をみた。「今から行く?隼人、時間はあるよな?」 隼人は同意した。 南川が一緒に行こうか、と言ったが、圭はあっさり断っていた。

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