24 / 93

第24話

NPO法人の住所は、繁華街の裏通りだった。 古いが掃除が行き届いたビルの一室だ。郵便受けにはNPO法人の名前が入っている。NPO法人の下には小さい文字で他の団体や企業名が入っていた。 実際に、事務室の前に行ってみる。ドアは閉まっていた。しばらくうろうろしていて、圭がドアを軽くノックした。返事はない。ドアノブを回すが動かなかった。 今日は土曜日のせいか、事務所に人はいないようだった。 ドアの前にいたら、二つ離れたドアから人が出てきた。 怪訝そうにこちらを見てくる。 話しかけられたくもないので、その場を立ち去った。 建物を出ると、圭は何度も振り返った。 「見られている気がする」 隼人を脅かす冗談かとも思ったが、表情がわずかにこわばっていた。本気のようだった。 「思った通り、スジの悪いお客さんかもしれないな」と圭は言った。 翌日の未明、隼人が自宅で寝ていると、携帯電話がなった。番号は表示されていない。 半分寝ぼけながら電話をとった。機械で加工された低い声がした。 「大内さん、ですね」と言われた。 「そうですが、どなたですか?」 「昨日、弊社にいらっしゃったと聞きました」 名乗りはしなかったが、昨日訪問した先といえば、NPO法人だろう。留守だったはずなのに、どこからか見ていたのだろうか。 「あなたが、私どものところには来る必要はありません。それから、あなたと一緒にいた男は、狭霧ですね。彼が片倉竜三郎の息子で、その息のかかった仕事をしているのは、知っていますか?片倉竜三郎は、反社会的な組織ともつながっています。狭霧を使うのは慎重にされた方がいい。あなたの会社のためになりませんよ」 一方的にそう言われ、電話は切れた。 隼人はしばらく電話を握りしめていた。 疑問は多くあるが、言えることは、NPO法人は自分を探られるのを嫌っているのだ。そして、あからさまに脅しをかけてきた。 圭のことも知っているようだった。彼が、今、片倉竜三郎のために働いているというのは本当だろうか。たった一人の息子だから、ありえないことではない。

ともだちにシェアしよう!