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第29話

隼人は、かまわず圭の中の指を増やし、中を押し広げた。そのせいで、彼は全身に力が入り、痙攣している。 刺激のためだろう、潤んだ目をまばたきすると、双眸から涙がポロポロと零れ落ちてくる。 彼の目の涙を親指の腹で拭ってやると、圭が何か言った。。 「どうした?」 震える手で、圭が自分のシャツをつかんでいる。 耳を口によせ、聞き取ろうとした。 意外な言葉だった。 「はやと」 隼人を呼んでいるのだ。 「はやと」 もう一度、呼ばれた。それから、隼人のシャツを引きながら、後ろに倒れていった。あわてて腕で支える。 背中がベッドにつき隼人が覆いかぶさるような姿勢になった。 足を腰にからめてくる。 「圭、お前、俺のこと」分かって言っているのか?と聞き返しそうになった。 そうじゃない、と自分に答えた。これは何かの勘違いだ。 クスリは、時間がたつとともにどんどん圭の理性を奪っていくようだった。身体を支配されて、ほとんど意識はなく、何も考えられないのだ。呼びかけも、圭が分かって言っているのではないのだ。そう、自分に言い聞かせていく。 だが、「はやと、の、ほしい。ちょうだい」と圭は言った。 頭の中、圭の言葉が繰り返され、それだけになった。火がつけられたように全身が熱い。 わずかに残っていた思考力も、消し飛んだ。 スラックスの前をくつろげて、既に立ち上がったものを取り出した。 全身の汗が、とまらない。 両手で圭の足を広げて、上に持ち上げた。圭は力の入らない手をパタパタと動かしている。 緩んだ後孔に、隼人は自分をねじ込んだ。 「ああ!」と悲鳴に近い声で、圭が苦痛を訴えてきたようだった。だが、その声は、隼人の頭の中で、甘い音に変換される。 隼人は、自分を止められなくなった。 焦点の合わない涙目で圭が声をあげている。 狭い熱い中を、半ば強引にねじ込んでいく。締め付けられる感じが、たまらない快楽になる。 圭の中が蠢いて自分を取り込もうとしている。先ほど確かめた奥の快感をつくと、さらに蠕動して、締め付けてくる。 隼人は自分の快楽を求めて腰を動かし、圭の中で自分をさらにたかぶらせた。 「すげえ、いい」 隼人は、両手を圭の足から放し、のしかかるようにして彼を抱きしめた。涙と唾液でドロドロの顔を舐めて、唇を吸った。 「ん、」 「圭、俺、お前のこと」 腰をさらに打ち付けた。圭は、目を閉じて、苦しそうな顔をしている。 彼の呼吸を止めて、何もかも奪ったやりたくなった。重くて熱い。何度も行き来させて、しまいに、圭の中ではぜた。 ゆっくりと引き抜くと、自分が圭の中で出したものもトロリとでてきた。 圭は、目を閉じ、気を失っていた。 そこで、やっと自分が戻ってきた。 だが、隼人は、圭を抱きしめる腕をとかなかった。 彼が、この腕の中にいるのも、今だけだ。 目が覚めれば、全てが終わる。残酷な圭が、隼人の想いを斟酌するなんてことはありえない。 だから、片付けるのは後だ。何もかも、後回しだ。

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