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第32話
圭は、自分の家に戻った。
まだ、頭は痛いし、全身だるい。横になって眠ってしまいたかった。
だが、スマホに知り合いのハッカーの村崎兄弟からメッセージが入ってきた。
塚田のいる店舗兼倉庫にあるPCの情報が入手できたので、ファイルを送ったというものだ。
気力を振り絞って家にある仕事用のノートパソコンを開き、村崎兄弟から送られてきたファイルをダウンロードした。
ファイルの中身には、文章が大量にあり、英語が多い。
圭は、しばらく眺めていたが、読めないので諦めた。
だいたい英語は苦手だし、いくつかの文章を自動翻訳にかけたが、チンプンカンプンだ。
こんなに具合が悪い中で、頭を使って読み解くことはできない。
圭は、ため息をついた。頭痛がまたぶり返して来る。こめかみを人差し指と親指で擦った。
普段、圭は、危険なことには手を出さない。
何もわからないところに無鉄砲に飛び込むなんて、バカな素人だと思っている。どんなことでも詳細に調べ上げる。
危なさそうなことは事前に察知し、逃げることをためらわないのが信条だ。
どんなシチュエーションでなにが起こってこんな体調不良になり、さらに得体のしれないドラッグをポケットになんか入れておくということになったのだろうか。
二日酔いのレベルではない悪さだ。記憶も全くないというのも気がかりだ。
圭は、自分の財布の中を確かめた。記憶にある金額からそれほど変わりはない。そもそも、あの日はそれほど金を持ち歩いてはいなかった。
アングラな情報を得るために時々利用する仮想通貨の口座もみるが、利用していなかった。
だとすると、このドラッグとおぼしき錠剤はどうやって手に入れたのだろうか。
このところずっと塚田のいる倉庫兼店舗を見張る傍ら、このドラッグの販売ルートを探っていた。記憶はないが、情報収集している際に、どこかで入手したのだろうか。
それにしても、どこをどうして隼人の家になど行ったのだろうか。
さっぱりわからない。
後で、もう一度、隼人に自分の様子を聞くしかないのだろうか。
隼人は、怒っていたみたいだ。
電話をあっさり切って、その後は連絡がない。
仕事に区切りがついたら折り返してくれてもよさそうなものなのに。
だが、隼人のことを考えるのはやめにした。
怒っている彼のことを考えると、ただでさえ落ち込む気分が、ますます滅入る。
まずは、この小さなビニール袋に入っているドラッグのことを調べよう。再度、販売ルートをたどるのだ。たどって行けば、昨夜、何があったのかもわかるかもしれない。
そこまで考えて、圭は、目を閉じた。
短時間寝て身体を回復させよう。
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