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第34話

圭が大学在学中に探偵の仕事を始めて、片倉に今後の生活費はいらないと伝えたのだ。 すると、片倉の屋敷に呼ばれた。 探偵の仕事として依頼したい。圭の作る報告書の対価を支払うと言ってきたのだ。要は、金を払い続け圭を自分の手元にとどめたいということなのだ。 片倉は強欲だ。 ほったらかしの子どもでも、離れていくとなると惜しくなったのだ。 それ以来、圭は、片倉のために調べ物をし、レポートを書き、片倉は数枚のささいなレポートに、法外な金を支払っていた。 だが、圭はその金が報告書の対価だと思ったことはなかった。 金は圭と片倉をつなぐ唯一の綱なのだ。しかも、圭の側からはいつでも断つことができる。 そんな圭の考えを知ってか知らずか、鶴見は首を横に振って見せた。「報告書はお前の仕事だろう。プロとして受けたんじゃないとかガキみたいなこと言うな。なさけない」 「ガキなんだよ、俺は」 「片倉様が心配されていた。いつもは正確で質の高いレポートなのに、前回のは、全く薄い内容だった。お前になにか問題が生じているんじゃないかと言われた」 「それであんたがのこのこ俺の生死を確認しに来たのか。問題なんか何もない。忙しかったから、知り合いに頼んだだけだ」 「外注に出すでもせめて中身をチェックしろ。それか、もっとクオリティの高い外注に出せ。学生の作文以下だったぞ」 「俺のレポートなんて、あんたらが適当にアレンジしてオヤジに報告すればいいじゃないか。そのまま渡したりするから、」 言葉の途中で鶴見がかぶせてくる。 「片倉様は、お前のレポートを楽しみにしていらっしゃるんだ。届いたらすぐにプリントしてお持ちすることになっている。誰かが勝手に手を入れたりしたら、激怒されるだろう」 「あんたらの事情なんて知るかよ」と圭は言った。それからふと窓の外を見る。「どこに向かってるんだ?」 「ぐるっと回って帰るだけだ」

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