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第46話

数日間、圭は南川と交代で、倉庫兼店舗と塚田を見張っていた。 近所にある古いアパートの屋上にある小屋だ。小屋は昼間は暑く、夜は寒い。環境はよくないが、見張りには最適な場所だった。 大家に適当な嘘をついて、短期間貸してほしいと頼んだのだ。正直、大内警備からの費用では、既に大赤字だが、圭はかまわなかった。 正体不明の塚田と彼が扱っているドラッグ、彼を狙うNPO法人という図式がどのような関係になるのか、知りたくてたまらなかったからだ。 その日、南川と交代するため、夕方に、圭は小屋にきた。 明日は、この小屋に隼人が来る。英語の内容を説明すると言い、さらに見張り場所がどんな感じか知りたいと言ったので場所を教えたのだ。 小屋に入ってきた圭に、南川がカメラがとらえた映像を映す小さなディスプレイから顔をあげる。 圭は進捗を聞いた。「どうだ?」 南川は答えた。「今日は、裏手に軽トラが来てた。荷物を運びこんでた」 「へえ」圭は南川の肩越しにモニターを見る。 「ドラッグの一部はあの倉庫で合成しているみたいだから、その、材料だろうな」 「トラックの番号も、運転手の顔もばっちり撮れてるな」顔がほころんだ。これで、また一歩犯罪の手がかりができた。 南川が言う。「機嫌がいいな」 「ああ」と圭はうなずいた。 「明日の朝、大内さんが来るんだろう」 圭はまたうなずく。「明日は休みなんだってさ。英語の内容の話して、それから、しばらく一緒に見張る」 南川が言った。「どうりで機嫌がいいはずだな」 圭は反論した。「別に時間が空くから休もうとか、遊ぼうとは思ってないぞ」 「そうじゃない」南川はなぜか優しそうな目を向ける。「大内さんに来て手伝ってもらうの楽しみなんだろう」 圭は、驚いた。「なんでそうなるんだよ」 「この前もそうだったが、お前、大内さんが来たら上機嫌だったじゃないか。わかりやすいんだよな」 「俺は、いつも、機嫌がいいんだよ。くだらないこという奴がいない限りな」と圭は答え、南川にしかめっ面をしてみせた。

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