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第53話

「何か動きは?」と圭は聞いた。 「人が数人出入りしていた」 圭は立ち上がった。伸びをする。 「疲れているのか?」と隼人が聞いてくる。 「別に」と圭は答えた。 「この後も、ずっとここで見張りを?」 圭は首を横に振った。「販売ルートや取引についての情報も探さなきゃならないから、この後は、見張りはアルバイトを頼んでる」と圭は言った。「南川のところのアルバイト」 「アルバイト?」 「そう。大学3年生らしい。しっかりしてるんだ」 「大学生って、危険じゃないのか?なにかあったらどうするんだ?」 「その辺は、南川はよく心得てる。何を見ても、この小屋からは絶対に出ないように伝えてる。変わったことがあれば、南川か俺に連絡してくる。それに、あくまでも、ここでは見張りは、連中の行動を記録するためだから。それに、その大学生、すごく優秀なんだ。俺も時々仕事頼むけど、一度も変なことにはなってない」と圭は答えた。 「バイト代は?」 「南川が、他の仕事とまとめて払ってる。探偵にあこがれてるらしいから、本人は修行のつもりなんだって。金には困ってないらしいし。どこぞの金持ちの子どもなんじゃないのかな」 隼人はしばらく考えている。 「大学生じゃなくても、手伝いは必要だろ。隼人も会ったらわかるけど、できる奴だよ。年齢じゃないし」と圭は言った。 隼人は納得はしていないようだがうなずいた。 「南川さんの判断なら、口出すことじゃないな。それに、南川さんもお前も休みが必要だしな」 「休みなんかないけどね」と圭は答えた。 「明日は、日曜日だろう?」 「日曜日だけど、仕事はする。サラリーマンじゃないんだから」 「なにをするんだ?」 「ドラッグの販売ルートに詳しい連中に話を聞きに行く」 隼人は何かを考えたようだった。 「俺も、日曜日に一緒に行ってもいいか?」 「いいけど、どうして?日曜日は休みなんじゃないのか?」 「俺も経営者だからな。『サラリーマンじゃないんだから』」と隼人は圭の口真似をして答えた。 圭は、軽くつま先で蹴った。隼人が笑っている。久しぶりに笑顔をみた気がした。 二人の間に緊張感はない。 だいたいが、圭が気を回しすぎていたのだ。全て、気のせいだったのだ。 それから、日曜日の待ち合わせの時間と場所を決めた。

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