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第58話

圭は関西に行ってしまった。ここ数日連絡はない。 連絡がない理由が関西に行ったからなのか、あの時の会話のせいなのか、隼人はずっとグルグルと考えている。 はかどらない仕事のせいで、毎日の帰宅は深夜だ。駅から歩いて帰る道には誰もいない。 一階のエントランスでオートロックキーを開けようとしていたところ、後ろから声がかかった。 「大内さん、ですか?」 知らない人物の低い、穏やかな声だった。 「はい、そうですが、なにか?」そう答えながら、隼人は無警戒に振り返った。 振り向きざま、首筋にビリっと強い痛みが走った。 それから、目の前が真っ暗になり、意識が飛んだ。 隼人の意識がもどったときにいたのは、薄暗い部屋だ。 椅子に座らされて、両手を後ろで縛られていた。 最初は、なにが起こったのかさっぱりわからなかった。 だが、徐々に事態は理解できた。 ここは、塚田が乗っ取った倉庫兼店舗の中だった。床はコンクリートで窓は塞がれている。 塚田やその仲間たちが、隼人を襲い、ここに運び込んだのだ。 意識が戻ったときに目の前にいたのは二人の男だった。 一人は40代くらいの短い髪で丸い眼鏡にあごひげの男。写真で見た塚田本人だった。写真の印象より痩せて筋肉質だ。 「お前はなんでここに探りを入れているんだ?」初めて耳にする塚田の声だった。想像していたのと同じ、がさついた声だった。「大内隼人。しけた警備会社の人間が、なんで、俺たちのことを調べてる?」 塚田の隣の男は、隼人の財布の中身を見ている。 床には隼人のスマートフォンや名刺入れ、鍵が散らばり、拉致された時に手に持っていたカバンの中身も全部外に出されていた。 「誰に頼まれた?」と塚田は言った。 隼人が誰で、何の目的で塚田を探っているのか。誰の指図か。矢継ぎ早に聞かれる。 「知らない」と隼人は答えた。口の中はカラカラで話がしにくい。「何のことだ?」 「しらばっくれてんじゃねえ」と塚田は言った。「いい度胸だな。このまま口を割らないでいたら、解放してもらえると思っているのか」 胸倉をつかまれ、いきなりガツっと頬を張られた。口の中が切れて血の味が広がる。

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