59 / 93

第59話

「黙っててもいいが、お前の仲間がどうなってもいいのか?」ともう一人の男が言った。「狭霧圭という男だ」 塚田たちは圭のことも知っているのだ。 何と返事をするか考えていると、塚田が言う。 「その顔は狭霧を知ってるな。俺たちを探る理由はなんだ?奴の父親がバックにいるのか?片倉竜三郎が、お前たちに俺のことを探れと言ってきたのか?」と塚田は聞いてくる。「この前、ここの近くをウロウロしていやがった。本人は見つかってないと思ってたんだろうがな」 塚田は自分のスマートフォンの画面を隼人に見せた。 そこには、圭が写っていた。今、自分がいるのと同じような薄暗い倉庫の中、ぐったりした様子で、横たわっている。 ここに捕まっているのか。関西に行っていたんじゃないのか。 隼人は血の気が引く思いだった。 「狭霧圭は、私立探偵で、俺が狭霧に依頼をしたんだ」と隼人は答えた。「狭霧は単に頼まれ仕事をしているだけだ。俺が金で雇っただけだ」 「金か」と塚田は言った。 「そうだ」と隼人は答えた。「彼は、金を払えばだれからでも仕事を受ける。それ以上でもそれ以下でもない」 「で、お前んところが狭霧圭に金を払ったのか。なんで、ここを探っているんだ」 「知らない」 「ああ?!知らないってどういうことだ?」 「こっちも頼まれてるだけだ。雇われてるんだ」 「誰から?」 「知らない」 また、ガツっと殴られる。今度は身構えていたので、痛みはあるが先ほどの衝撃ではない。 「知らない奴からどうやって頼まれんだよ」 「得体のしれない連中からの依頼だ。金を貰えるからやってるんだ」と隼人は答えた。 「得体のしれない連中って誰だ?」 「わからないからそう言っている」 「連絡はどうやってとるんだ?金はどうやって受け取る?」 隼人は答えなかった。 塚田は容赦なかった。口を割らせようと殴られ、脅かされた。指を切り落とすとか、ドラッグ漬けにするとも言われた。 脅しへの恐怖はあったが、それ以上に、圭の身が案じられた。この建物のどこかで倒れているのだ。助けなければ、彼を連れて、ここから逃げ出さなければならない。 腹を蹴られ、椅子ごと床に倒された。頭を打ったせいで意識がもうろうとしてくる。そこに、塚田はさらに蹴ろうとしてくる。 「おい、やめろ。それ以上は、だめだ」と一緒にいた男が塚田を止める声がした。「死んでしまうぞ。殺人犯になりたいのか」 塚田は足を止めた。 「こいつはヤバい奴だ。このままにしておけないのはお前もわかってるだろ」 「だからって、殺す気か?引き返せなくなるぞ」 「引き返す?どこに引き返すっていうんだ?もう戻る場所はない」と塚田は言った。 そこまで聞いて、隼人は意識がなくなった。

ともだちにシェアしよう!