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第59話
「黙っててもいいが、お前の仲間がどうなってもいいのか?」ともう一人の男が言った。「狭霧圭という男だ」
塚田たちは圭のことも知っているのだ。
何と返事をするか考えていると、塚田が言う。
「その顔は狭霧を知ってるな。俺たちを探る理由はなんだ?奴の父親がバックにいるのか?片倉竜三郎が、お前たちに俺のことを探れと言ってきたのか?」と塚田は聞いてくる。「この前、ここの近くをウロウロしていやがった。本人は見つかってないと思ってたんだろうがな」
塚田は自分のスマートフォンの画面を隼人に見せた。
そこには、圭が写っていた。今、自分がいるのと同じような薄暗い倉庫の中、ぐったりした様子で、横たわっている。
ここに捕まっているのか。関西に行っていたんじゃないのか。
隼人は血の気が引く思いだった。
「狭霧圭は、私立探偵で、俺が狭霧に依頼をしたんだ」と隼人は答えた。「狭霧は単に頼まれ仕事をしているだけだ。俺が金で雇っただけだ」
「金か」と塚田は言った。
「そうだ」と隼人は答えた。「彼は、金を払えばだれからでも仕事を受ける。それ以上でもそれ以下でもない」
「で、お前んところが狭霧圭に金を払ったのか。なんで、ここを探っているんだ」
「知らない」
「ああ?!知らないってどういうことだ?」
「こっちも頼まれてるだけだ。雇われてるんだ」
「誰から?」
「知らない」
また、ガツっと殴られる。今度は身構えていたので、痛みはあるが先ほどの衝撃ではない。
「知らない奴からどうやって頼まれんだよ」
「得体のしれない連中からの依頼だ。金を貰えるからやってるんだ」と隼人は答えた。
「得体のしれない連中って誰だ?」
「わからないからそう言っている」
「連絡はどうやってとるんだ?金はどうやって受け取る?」
隼人は答えなかった。
塚田は容赦なかった。口を割らせようと殴られ、脅かされた。指を切り落とすとか、ドラッグ漬けにするとも言われた。
脅しへの恐怖はあったが、それ以上に、圭の身が案じられた。この建物のどこかで倒れているのだ。助けなければ、彼を連れて、ここから逃げ出さなければならない。
腹を蹴られ、椅子ごと床に倒された。頭を打ったせいで意識がもうろうとしてくる。そこに、塚田はさらに蹴ろうとしてくる。
「おい、やめろ。それ以上は、だめだ」と一緒にいた男が塚田を止める声がした。「死んでしまうぞ。殺人犯になりたいのか」
塚田は足を止めた。
「こいつはヤバい奴だ。このままにしておけないのはお前もわかってるだろ」
「だからって、殺す気か?引き返せなくなるぞ」
「引き返す?どこに引き返すっていうんだ?もう戻る場所はない」と塚田は言った。
そこまで聞いて、隼人は意識がなくなった。
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