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第60話

圭は、夜中に大阪の繁華街にある小さな公園にいた。 ここでドラッグの流通ルートに詳しい男と待ち合わせをしている。知人のつてで紹介してもらったのだ。 公園には人の気配はなく、時々、周辺の店から出てきた酔客の大声や歌声が聞こえる程度だ。 現れたのは、圭より少し年上の男だった。痩せて目ばかりがぎょろりとしている。どうみても健康ではない。口調やしぐさもどことなく奇妙だ。 彼と圭は、公園の灯りの下にあるベンチに腰掛けた。 塚田のドラッグの話を聞くと、流通ルートのことや最近の取引について詳しく教えてくれた。 そして、男はポケットから小さい銀色のケースを取り出した。 「これ」と彼は言い、蓋を開けた。中にピンク色の錠剤が入っている。「話題の媚薬」 圭は覗き込んだ。 「これが?俺が知っている媚薬より小さい気がする。色もどぎついな」と圭は感想を述べた。 男はニヤリと笑う。「改良バージョン」と言った。「こっちの方が、時間が短い。飲んでから効くまで、30分くらいだ」 「30分。確実に?」 「いや。それは人による。薬なんてそんなもんだろ。だけど、前よりはましだ。治験してるところだが、今のところ全員1時間以内にぶっとんでる」 「治験って、ちゃんとした薬じゃねえのに、なにカッコつけてんだよ」と圭はつぶやいた。 「君もやってみる?」と男は聞いてきた。「結果、教えてくれる?」そう言いながらケースを差し出される。 「結果?」 「何分くらいでどんな風にぶっとんだのか。薬が切れた後、どうなったのか、知りたい。治験には、信用のおける被験者が必要なんだ」 男は、毒々しいピンクの錠剤を3粒ケースから取り出すと、親指の先ほどの小さな白いプラスチックケースに入れ、圭の手のひらに乗せた。 「どうぞ。これはあと少ししたらかなり流行るはずだ。先取りできる機会だよ」 ぎょろ目の男はそう言いおいて去って行った。

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