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第62話
どれくらい時間がたっただろうか。隼人は物音に目を覚ました。
ガタガタと部屋のドアがなり、男の大きな声が聞こえる。
どうやら続きが始まるみたいだ。もっと酷いことになるだろうな、と隼人は思った。指を切ると言っていたが、それだけではすまないかもしれない。
そして、ドアが大きな音を立てて開いた。
スーツの男たちが数人入ってくる。
先ほどの男や塚田とは違う。
「おい」
一人が隼人を指さすと、後ろにいた若い男が近づいてきた。
そして、後ろで縛っていた縄を切った。
「歩けるか?」と先頭にいる男に聞かれた。
隼人は答えなかった。
何者だろうか。どこに連れていくつもりだろうか。
「心配しなくていい。俺たちは、狭霧に頼まれてお前を助けに来た」
男はそう言った。
「助けに?」意味が分からず聞き返した。「圭の依頼?」
「そうだ。ここから出る」と男は答えた。
「圭は、狭霧は無事なのか?」と隼人は聞いた。
男は怪訝そうな顔をした。
「無事ってなんだよ」
「ここに捕まっているはずだ」
「ん?悪い夢でも見たのか?狭霧は、大阪からこっちに向かってるところだ。ここにはいない」と男は隼人に言った。
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