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第66話

病室を出ると、圭は、絡みついてくる南川の腕から逃れ、彼の肩を押して遠ざけた。 「なんで、あんなことすんだよ。隼人が見てるのに」本気でむっとくる。 責められて南川は哀しそうな顔をした。「あんなことって、ずっと心配してたから、無事なところを確かめたいんだ」だが、本心では哀しくなんてないのだ。圭はわかっている。 「確かめるのに、キスする必要あるのかよ」 「あれは、つい、だ。それに、大内さんは気にしてないだろう。狭霧が男とも付き合ってるってよくわかってるみたいだ。人前でキスするのなんて、狭霧は平気だったろ。前は自分からしてきたのに」 「もう、付き合ってないんだから、そんなことしないんだ」と圭は言った。 隼人はどう思っただろうか。南川と自分が付き合ってるって思ったんじゃないだろうか。前もそうやって聞かれたし。 誤解なのに、と圭は思った。だが、すぐに、誤解されたからって何だって言うんだ、と自分につぶやいた。 廊下のソファーに座り、圭は南川に一通り説明をした。南川は時々質問をはさんでくる。 あらかた話し終えると、圭は深く息をついた。 大阪から始発の新幹線で東京に着き、そこからこの病院まで最速で来たのだ。その間、ずっと悪い夢を見ている気分だった。隼人にどんな暴力を振るわれているのか、殺されるかもしれないと、想像ばかり膨らんでいた。席に座っていることもできず、何度も鶴見に電話したが、彼からは断片的な連絡しかこなかったのだ。この場所に来て隼人の顔を見るまで気がきではなかった。 今、隼人は病院のベッドで横たわっているが、検査の結果はそれほどひどいものではなかった。顔や身体の打撲程度だ。唇が切れて腫れているから、どうみても殴られたという感じではあるが、見た目ほど傷ついてはいない。 落ち着いてみると、大したことはしていないのに耐力を使い切ってへとへとになっていることに気づいた。ここに来るまで、緊張しすぎていたのだ。

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