南川と今後について打ち合わせていていると、数人のスーツの男がこちらに来た。中に鶴見もいる。 座っている圭の前に立ち、見下してくる。冷たい視線だ。 「塚田は？」と圭が聞いた。鶴見たちは、隼人を病院まで連れて行くと、逃げた塚田の行方を追っていたのだ。 「行方不明だ。手がかりを探しているが、時間がかかる」 「そうか」 「あの倉庫、五十井組の若いのが見に来てたらしい。五十井組も仲間を置いて逃げた塚田を探している。誰が倉庫を襲ったのかはわかっていないみたいだ。この病院にも、お前たちにも、仕返ししてくる可能性は、今のところは低いだろうな」 よかった、と圭はうなずいた。とにかく、隼人の会社に迷惑がかからないようにしなければ。 黙って考えていると、鶴見が「どういうことだ？」と不満そうに聞いてくる。 「どうって」と圭は鶴見を見上げた。「なにが？」 「こっちは夜中にたたき起こされて、何のことかもわからず殴り込みをするはめになったんだ。説明しろ」 鶴見の声は、病院だから抑えているが口調が巻き舌がかっていて、まるでチンピラだ。 「例のＮＰＯ法人からの依頼で塚田を調べてたんだ。そうしたら、塚田が、隼人を拉致した」 「ＮＰＯ法人がクライアントだったのか」と鶴見は言った。「なんで塚田を？」 「知らない。塚田の犯罪の証拠を探せってことだった」 圭の言葉に鶴見は首を傾げている。 「犯罪の証拠か。それで、見つかったのか？どんな犯罪だ？」 圭はうなずいた。「違法ドラッグの売買をしてる。資料を揃えて、報告書を出すつもりだ」 鶴見はまだ渋い顔をしている。「お前。変なことに巻き込まれやがって。つくづく困った奴だな。五十井組は、広域暴力団の黙打会系だ。そんな連中と俺たちを抗争させる気か？」 「ヤクザが怖いのか？」と圭は尋ねた。 「当たり前だろう」と鶴見は言ったが、本心では全くないようだ。 「嘘つけ」と圭は言った。 鶴見は肩をすくめ、薄い唇で笑ってみせた。「俺が何で嘘つかなきゃならないんだ。片倉様は昨夜、お前のことを大層心配されていた。ヤクザがらみと知ったら、ますます心配されるだろう。お前、親不孝すんじゃねえぞ」 それには圭は答えなかった。南川をうながし、駐車場に向かった。