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第70話

「破棄の確認はどうするんですか?」と間島が佐久間に質問している。 「間島さんの事務所から、データの完全破棄証明書を貰えればいいそうだ」と佐久間は答えた。 間島はうなずき、圭の方を向く。 「狭霧君、この報告書のデータすぐに送って、それから、削除できるかな?紙類は全部シュレッダーにかけて欲しい」 圭は、しばらく考えて口を開く。 「どうしてですか?もともと変な依頼だとは思ってたけど、ちゃんと報告も受けずに金だけ払うって、変だ」 佐久間は、報告書を間島に返した。 「この前、塚田がうちの社長を監禁して暴行した件で、あまりにも危険だから、私が依頼主のところに行って、苦情を述べたんだ。仕事は確かに請け負ったが、こんな、自宅で待ち伏せされて暴行されるといった危険なことになると事前には告げられていなかった。約束が違う。そうしたら、NPO法人から、もう追わなくていい、費用は払うと連絡が来た」 「なんだよ、それ」と圭は思わず言ってしまった。「調査の途中で抗議するって、なんでそんな勝手なことすんだよ」 「勝手というのはなんだ?」と佐久間は不機嫌になった。 「勝手だろ、こっちに聞きもしないで。仕事請け負って動いてたのは俺だ。それを、頭越しに中止にするなんて。はたから見たら、俺が途中で仕事やめたみたいじゃないか」 佐久間はぎろりと圭を睨みつける。 「そもそも、隼人坊ちゃんが、監禁されて大怪我をおうようなめにあったのは、お前が、坊ちゃんを巻き込んだからだろう。この件は、わたしが、間島さんに依頼して、お前が請けた。坊ちゃんは実務には関係なかったはずだ」 「それは、そうだけど」と圭は反論しようとした。 「坊ちゃんは親父さんに似て頼まれたら否とはいわない性格だ。だから、高校の後輩のお前を手伝ったんだろう。だが、俺は、危険があるかもしれないから、外注に出したんだ。依頼主の坊ちゃんが大怪我して、お前はここでピンピンして、何で仕事断るんだとか偉そうに息巻くって方が、俺には勝手な考えだ」 隼人が手伝うって言ってきたんだと頭の中に浮かんだ。 だけど、そもそも、自分が隼人の家を訪ねたのだ。 彼をからかいたくて。彼と話をしたくて。 圭は口を閉じた。

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