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第75話

伸ばした手をとられて引かれた。そのまま、圭は抱きしめられた。 「圭」と隼人は言った。 湿った熱い声。 呼びかけが耳たぶから中につたい、鼓膜をふるわせた。いくども、いくども名前を呼ばれた。 さざ波のように音が頭の中に訪れた。声は、ただの空気を伝わる振動にすぎないはずなのに、 圭の心臓を血液の循環の全てを支配した。 隼人の唇が自分の唇に触れた。自然に口を開き、招き入れていた。 最初は、ゆっくりと、だんだん強く。隼人が圭の内側に入ってくる。最初は声で、次は舌で、圭の中が隼人の一部になっていく。 隼人の舌は肉厚で少しざらついている。 自分の舌を絡めつかせると、隼人のトロリとした目が嬉しそうな色になる。 キスをしながら、隼人がもどかしそうに圭の衣類を剥いでいった。 ぴったりと身体を合わせると、溶けてしまう。自分がバターかアイスクリームになったようだ。自分と隼人の熱で、もう形をとどめられない。 全身で感じる隼人の皮膚がたまらない。体温が、混ざり合う。 圭は、彼の首に手を回し、もっと、と引き寄せた。隼人を避けることなんてできない。 手放せない。手放したくない。 身体が、覚えているのだ。 彼の手が熱を発して、自分の肌をまさぐっていく。それを、意思とは関係なく、悦び、迎え入れようとしていた。その先の官能を知っているのだ。 彼の身体を、自分は覚えている。 そして、もっと、もっと欲しいと、自ら開いて見せている。

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