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第81話
あの夜の翌朝。
隼人は、最悪の気分で目が覚めた。頭痛と吐き気が襲ってきた。二日酔いのひどい状態のような気分だ。
最初は怪我のせいでおかしくなったのかと思った。頭を殴られた後遺症なのかもしれない。
病院に行こうか、どうしようかと思いながら身体を起こした。そして、自分が全裸で、身体のあちこちに汚れがこびりついていることに気づいた。乾いた精液の匂いがする。
隼人は部屋の中を見回した。誰もいない。
明らかに、ここでセックスをしたのに、相手はどこにもいなかった。
相手って、誰と。
思い出せないことに気づいた。
昨夜のことが一切記憶にない。この家に帰る前からだ。いつ会社を出たのだろうか。そして、なぜ、この部屋にいるのか。恐ろしいほどに一切の記憶がない。
隼人は両手で顔を覆った。
あの、薬、だ。
圭が飲んでいた。記憶の亡くなる媚薬。セックスをしたくてたまらなくなる薬。
あれを、飲んだのか。いつ、どこで、どうやって飲んだのだろう。そして、誰とセックスしたのだろう。
それだけを必死に思い出そうとしたが、頭の中は、空っぽだった。
気分の悪さはだんだんに落ち着いた。
隼人は風呂に入り、着替えた。どんな状態であれ、仕事には行かなければならない。
先日、隼人が大怪我をして会社に行ったら、社員が慌てふためいていた。
何があったのかと問い詰められ、ひどく心配されたのだ。
適当に友人と喧嘩をしたけれど、後腐れないので大丈夫だと言っていなしたが、嘘だとまるわかりで、信用されてはいないようだ。
今日、仕事を休んだりしたら、また心配されるだろう。
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