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第85話

「そう。あなたたち、まだ、交流があったのね。よかった」 「交流ってほどでもないですけど、よかったっていうのは?」 「狭霧君、あなたが留学した後、学校に来られなくなってしまったでしょ。狭霧君、神経質なところがあるから、環境が大きく変わると、大丈夫かなって心配してたら、的中してしまって」 「狭霧が、転校したというのは聞きましたけど、学校に来られなくなったって、何かあったんですか?」 白木先生は隼人が知らないとは思っていなかったようだ。とまどっていた。 隼人は、食い下がって話を聞いた。 「狭霧君、入学してからずっと、あなたと一緒にいたでしょう。あなたたち、とても仲がよかったし、狭霧君、安心してたんだと思う。小さい頃からご家庭が不安定だったから、安心できるものが必要だったのね。あなたが、留学した後、学校に来なくなってしまって、おうちに行ったり、電話をしたんだけど、どうしているのかもわからなくなって。一人で暮らしているから、保護者にも連絡して。そんな感じで動いていたら、保護者の代理人から突然連絡があったの。入院させるってことと、退院後は転校するってことだった。詳しくは教えてもらえなかったんだけど、狭霧君、食事とか睡眠とかとれなくなっていたらしくて、神経衰弱っていうのかしら、かなり深刻な状態で、入院させたんですって」 「そうだったんですか」 「転校した先は、全寮制の学校で、そこでなら、毎日の食事も生活も学校が面倒みてくれるからって、保護者の方が決めたそうよ。結局、その後、一度も狭霧君には会わなかった。気にはなっていたんだけど、どうしようもできなくて。保護者ではないし、心配するだけで、なにも助けられなくて」と先生は言った。「あなたは卒業してしまうのはわかっていたことだったから、どうして、もっと、大人が気を付けてあげなかったんだろうって、とても後悔したの」 その後、先生は微笑んだ。 「だから、この前、街であなたと狭霧君が一緒にいるのをみかけて、よかったって思ったのよ。狭霧君は、あなたに会えたのね。あなたたち前と同じように楽しそうにしてた」 白木先生の話はそこまでだった。 その後も話をしたが、ほとんど覚えていない。先生と別れた後のことも、意識はない。 気が付いたら、タクシーを降りて、圭のマンションに来ていた。

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