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第86話
同じころ、圭は急に訪ねてきた鶴見と自宅のマンションの居間で向かい合っていた。
何の用だと言ったら、改まってそこに座れとソファーを示された。神妙にしろ、とでも言いそうな雰囲気だ。
鶴見が不機嫌そうに圭に話しかけてくる。
「お前、塚田の件、自分が仕事で下手うったってなんで言わなかったんだ。塚田に捕まってただろ?」
「はあ?何のことだ?」
鶴見は、ポケットからスマホを取り出し、写真を見せる。
倉庫のコンクリートの上に、自分が縛られ、横たわっている写真だ。目を閉じて、縮こまっている。
「これだ。どういうことだ?」
「どこでこの写真?」
「塚田が逃げたんで、始末つけにきた五十井組の幹部と話したら見せられた。聞いたら、前に塚田たちがお前を捕まえたらしい。自分たちを調べている理由やお前が何者かを聞き出したそうだ。だが、ちょっと目を離した隙にお前が逃げたってことだった」
「あ、そう」と圭は言った。
覚えていない。
覚えていないことが、ここ最近あったので、全部、理解できた。
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