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第90話

鶴見は手紙を机の上に整理した。 いらないなら自分で捨てろ、と言いおいて、狭霧の家をでた。狭霧は物思いに沈んでいるようだった。 バカな奴だ、と鶴見は思った。いつまでも我侭なガキのままだ。 エントランスロビーまで降りると、オートロックの自動ドアの向こうに見知った顔があった。 狭霧の突然の依頼で、助けた男だ。 先日ひどく殴られた跡はまだ消えていない。 中に入れず途方に暮れたように立っている長身のその男のために、鶴見は自動ドアを開けてやった。 大内隼人は鶴見の顔を見て驚いたが、すぐに頭を下げて挨拶してきた。 鶴見は、返事をせず、黙って狭霧の家の階で停まるようエレベーターのロックも外してやった。 大内は不安そうな顔のままエレベーターに乗り、上がっていった。 あの大内隼人という男も、相当バカで、しかも、大甘だ。あれじゃあ、狭霧がつけあがってしょうがないだろうに。 鶴見はそんなことを考えながらマンションを立ち去った。

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