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第3話
パン屋に入ると「あら、学校終わったの?」と年配の女性に声をかけられた。
「こんにちは」
流星と葉月は一緒に挨拶をする。
パンを選んでレジに持っていくと「ありがとうね、あっ……そうかもうすぐ修さんの」と年配の女性が寂しそうにする。
彼女は流星の大叔父が好きなパンを覚えているのだ。
「流星くん何か修さんに似てきたわね、若い頃カッコ良くてオバサンも子供の頃に山笠見に行って修さん見てたわ」
思い出したように言う彼女は少女みたいで可愛らしかった。
「あれ?もう学校終わり?」
奥から可愛い顔をした男性が顔を出した。ここの跡継ぎ息子。彼の父親が亡くなってから都会から戻りパン屋をやっているのだ。
「一護さんこんにちは」
ぺこりと頭を下げる葉月。もちろん流星も。
一護と呼ばれた彼は流星のトレーをみて、「あ、そーだ!おまけある、恭平ー!!」と奥に声をかけた。
「なに?」
これまたイケメンな男性が顔を出して流星に気付く。
「おー、流星やん!もうすぐ山笠やね」
と手を振る。彼は流星と山笠仲間。百貨店勤務なのに何故かここにいつも居る。
「うん」
嬉しそうに話す流星。
「でも、今年はちょーとやばいんだよね流星は」
ニヤニヤする葉月。
「ちょー葉月やめろ」
流星はここでバラされてたまるかと慌てる。でも、好奇心旺盛な彼らは「なんで?」と聞いてくる。
「テストダメだったら先生から山笠禁止って言われてる」
「葉月……」
言いやがった……と流星は2人の反応を見る。
「マジか!なんや、勉強くらい教えるばい?一護が」
「恭平やないんか!」
と2人はボケツッコミしながら言う。
「大丈夫、僕が責任持って教えるけん」
「おー、葉月流石だな。小さい頃はピーピー泣いて流星の後ろにばっかおったとに成長するんやな」
「恭平オヤジくさいから……奥から余ったパン持ってきてよ」
一護は恭平を奥へと押し込む。
「そっか、大変だね。受験控えてるもんね、流星は先生になるっちゃろ?葉月は?」
一護は2人を交互に見る。彼の言葉で流星は葉月の進路希望を知らない事に気付いた。
「僕ですか?色々考えてますよ」
葉月はニコッと微笑む。
「まあ、葉月は心配ないだろうけど」
一護がそう言った時に恭平が「これ?」と袋を持って戻ってきた。
「うん、それ」
一護はその袋を貰うと流星のトレーに乗せて「おまけ」と言った。
「え!ダメですよそんな!」
流星は遠慮するが「貰ってよ、余ってるからさ、勉強するんだろ?お腹空いたら2人で食べな」と押し付けられた。
会計を済ませ有難くパンを頂いた。
「勉強頑張れよ」
一護と恭平に見送りながら流星と葉月は店を後にした。
◆◆◆
「お邪魔しまーす」
葉月は慣れた感じで流星の家へ上がる。
「あら、葉月くん夕飯食べてく?」
流星の母親も慣れた感じで聞いてくる。
「十五夜で余ったパン貰ったから」
葉月がそう言うと「食べ盛りがパンで足りないでしょ?流星なんてすごーく食べちゃうから」と夕飯食べる決定になってしまった。
その後、流星と葉月は仏壇にいく。
修の写真の前に買ってきたパンを置くと仏壇のリンを鳴らして手を合わせる。
葉月も隣に座り手を合わせた。
「なあ……葉月、お前、進路指導なんて出したと?」
手を合わせながらに聞く。
「んー?内緒」
「はあ?内緒ってなん?」
葉月の答えに思わず声が大きくなる流星。
「行儀悪い」と葉月に怒られ静かになる。
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