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第4話
◆◆◆
その後も葉月に聞いたけれどはぐらかされた。勉強をしながら頭には入って来ない。
だって当たり前のように一緒にいたから。高校も当たり前のように一緒の学校へ進んだ。だからこれから先も当たり前に一緒なのだと思っていた。
子供時代は未来の事なんて何も考えなかったけれど、これから先の事を考える年になってしまった。
当たり前ってダメなのかな?
そんな事を考えていたら「流星、集中して!」と葉月に怒られた。
山笠がかかっているので気を取り直して勉強に集中した。
◆◆◆
結局は葉月に進路の事を聞けないままだった。
どうして教えてくれないのだろう?昔はくだらない事とか何でも話していたのに。
昔は良かったかも。こんな風に進路に悩まなくて良かったし、毎日楽しかった。
葉月と修と3人で飾り山を見て回った懐かしい思い出が脳裏を過ぎる。大人になるってこんなに面倒くさくて寂しいものなのかな?自分が見ていた大人達は堂々としていたからこんな苦労をしていたのかとそれはそれで感動するのだが。
流星はため息をついて自分の席に座ると顔を伏せた。
「なんだよ、辛気臭せぇなぁ、お前、テストだめだったら山笠禁止なんだろ?アホはこれだから可哀想」
頭の上から洋一の嫌味が降ってきたが面倒くさくて無視をした。
何時もなら売られた喧嘩は買うのだが。そういう気分になれない。
無反応の流星にちょっと戸惑う洋一。
「な、なんだよ?図星だから何も言えないわけ?」
わざと笑って言ってやっても無反応。
「おーい……流星?」
洋一は流星の髪の毛をツンツンと引っ張るがハエを払うみたいに手でよけられただけだ。
「なん?どっか具合悪いん?」
余りにも無反応なのに心配になる洋一は「なあ、葉月は?流星具合悪いみたいなんやけど?」と側にいるクラスメイトに聞く。
「葉月?さっき、職員室でみたけど?なん?流星具合悪いん?だから静かなんやね」
他のクラスメイト達も集まってきた。
職員室……。という言葉を聞き、流星はフラフラと立ち上がる。
「なん?お前大丈夫かよ」
洋一は心配そうに後を着いていく。
流星が進む先には保健室があるので洋一は保健室に行くのだと思った。
しかし、保健室の途中に職員室があるから流星の目的はこっちだった。
職員室の前を通り何気なく中をみると葉月が先生と何か話している。
立ち止まり耳を澄ませる。
「葉月、いつアメリカに引っ越すんだ?」
「えーと、来年なんですけど、父が家をまだ探せなくて」
そんな衝撃な会話が聞こえてきた。
アメリカ?
引っ越す?
嘘だろ?と思った。何も聞いていない。
先生がいつと聞いていたから先生は知っている。
いつも真っ先に何でも話してくれていた葉月なのに。一番話して欲しい事を彼は話してくれなかった。
流星はフラフラと保健室へと向かった。
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