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第7話
授業が終わると葉月がこちらに来る気配がしたので立ち上がり彼の横を通り過ぎる。
無視したように横を通り過ぎていったので葉月にもわざとだと分かる。
「流星」
声をかけると「トイレ」と振り返りもせずに言うと教室を出ていく。
「なん?お前ら喧嘩でもしてるん?」
何時と様子が違う事に洋一も気付き声をかける。
思い当たる事がない葉月は流星の後を追いかけた。
◆◆◆
無視するつもりは無かったが顔を見ると逃げてしまった。どんだけヘタレなん俺。流星は個室に入り便座に座りため息をつく。
何も言えないのは葉月の口から引っ越すという事を言われるのが怖いのだ。
教えて貰えなかったという事より離れ離れになるという事が怖いのだ。
どんだけ葉月の事好きなんだよ俺は。
居なくなると考えたら身体が震えて来る。胸も苦しくなる。人を好きなるのは楽しい事だと思っていたのに。こんなにも苦しいとは思わなかった。
思いを伝える事さえ出来ない。
やがてチャイムが聞こえ、流星はトイレから出た。
「ちゃんと手洗えよ」
そこには壁に寄りかかった葉月が居た。
「葉月」
「具合悪いんなら無理してくるなよ、皆心配するけん」
「…………」
流星は何も答えられない。
「流星、何?お前がそうやって何も答えない時って何か怒ってる時と隠し事があるときやん?何?」
葉月に詰め寄られて「なんだよ!葉月だって隠し事してんだろー!」と大きな声を出してしまった。
「隠し事?」
葉月はキョトンとした顔をする。
その表情で俺には言えないって事かよ!と心の中で腹を立てる。
「あ、いたいた!次、体育だぞ?」
体操服姿の洋一が2人を迎えに来たので流星は葉月の横を通り過ぎる。
「待てって」
葉月も後を追いかけた。
体育はバレーの授業で流星は見学の為に壁側に座ると葉月も隣に座る。何か言いたそうな葉月を無視して黙り込む。
「お前ね、いい加減にしろよ」
黙り込む流星に痺れを切らして話しかける葉月。
「何が?」
「さっきの隠し事って何だよ?」
葉月に質問されて「黙ってたくせに」とポツリと言った。
「だから何を?」
「職員室で……言ってた……」
「あっ、」
職員室という言葉で流星が何を言いたいのか分かり小さく声を上げた。
「なんだよ、一番大事な事言わんでさ、俺と葉月ってそんな薄い仲やったわけ?」
「……流星、違うって、落ち着いてから言おうと思って」
「先生は知ってたやん?」
「先生はうちのお母さんとばったり会って話聞いたから」
先生が知ってた理由は葉月の母親づてというのは分かったけれど、それでも来年引っ越すなら直ぐじゃないか!!と思う。
「落ち着いてっていつ?そんときは行ってしまうやんか!」
言葉にしてしまうと言葉達は一斉に溢れてしまう。
「流星!」
違うと言おうとした時に「危ない!」と声がした。その声がした時は既に流星が動いていて葉月を庇った。
バシーンという派手な音と共に「流星!!!」葉月とクラスメイト達の声が体育館に響く。
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