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第2話
「もうすぐ夏ツアーやん。夏のライブはほんとに楽しいよなぁ」
「そうだな」
僕達のバンドは去年メジャーデビューを果たした。
でも有名バンドとは言えるほどではなく、事務所にもそこまで縛られず、今まで個人的にやっていたことがお金を稼ぎながらやれているみたいなもの。だからこそ、僕達は個人個人でそれぞれ仕事には着いたままだし、本名は発表していないから今までとほとんど変わっていない。
もうすぐ夏のツアーだ。
ツアーと言っても有名なアーティスト達のように何箇所もまわれるわけじゃない。
だからこそ一つ一つに気持ちを込めてファンのみんなを喜ばせたかった。
「…高橋くん」
「…ん?ごめん佐藤、今なんか…」
「今日うち来ない?」
「…あ…」
ファンからはかわいい担当と言われる僕と佐藤。
確かに他のメンバーはかっこいい担当だし、女の子達に「かわいいー!」と目をキラキラさせながら言われるのはすごく心地よい。
でも本当は、、、
このバンド内のメンバーで僕だけがΩ、他の3人はαなのだ。
バンドを組んで4年経つ。
気づけば僕は全員に抱かれていた。
その中でも佐藤にだけはなぜか抱かれると胸がきゅんきゅんしてしまって、苦しくなる。
苦しくて苦しくて、辛くなる。
だから他の2人にも抱かれたのだ。
ほかの2人だって優しいし、大切にしてくれる。でも佐藤は特別なんだ。
ほら、また苦しくなる。
「…ごめん、今日はゆづの家泊まるから」
「あー!そっか…いやーごめんごめん!じゃあ次」
「その次は颯 と約束してる」
「…あーまじかー」
苦しい。顔を見れない。
段々と萎んでいく佐藤の声を耳に入れるだけで精一杯だった。
「お!きたきた!高橋くん!」
「はやく!はやく!」
足元ばかり見ていて気づかなかったけど、もう目の前にはスタジオ。
そしてゆづと颯が入口で手招いていた。
「おー!はやいね、二人とも」
「おん!ちょっと早く着きすぎたわぁって思っとったら先にはーくん来てて、ぼっちで笑った」
「五分前行動してるだけやん!」
歩みを早めた佐藤に僕は追いつけない。
足の長さが全く違うからだ。
はやく3人と練習を始めなくては。
ツアー初日はもう来月に迫っている。
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