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第3話

「竟に気が触れましたか?」  内側から湧き上がる叫びを凡て放出し尽くした時、ゴーゴリの背筋から頭頂部へと電撃にも似た刺激が走る。  屹度滑稽に見えて居た事だろう。壊れた人形でも性的刺激を感じる事は出来るのだから。  奪われた視界から生じる不安、視界以外は普段より敏感に周囲を感じとるも、其れを大きく上回る深い哀しみ。心と躰が引き裂かれまるで今迄別物であったかのように唐突に現実へと引き戻される。 「…………彼、が……僕に似て居るの?其れ共……僕が、彼に……」 「……貴方、詰まらないのですよね」  ――パリンッ  何かが大きく砕け散った音がした。万華鏡の様に様々な色がゴーゴリの頭の中に砕け散る。  ――判って居た、僕は彼には為れない。  空っぽの己の中に温かい何かが広がって行き、其れが亦包み込むような優しさで、真っ白な空間の中でゴーゴリは意識を手放した。  ゴーゴリは理解した。自身は役すら演じきれぬ三流どころか、舞台に上がる権利さえ無い無価値であったという事を。  欲の捌け口というだけの肉人形。自分が壊れた処で代わりは幾らでも――居る。

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