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第4話②
「ほら、初めて会ったときみたいに俺を誘いなよ」
目を細めて囁かれるその声に、指で掻き回すスピードが早くなって体の奥がきゅう、と痛くなる。
「あの時の香山さん、すっごくエッチだったなあ」
小田くんの指で唇を押されて、少しだけ舌を突き出して見れば先を爪先で弾かれた。
「ねえ、俺に見られながらセックスすんの、気持ちよかった?」
「……小田くんは、いじわる、だ……っ」
初めて会った時、というよりも見られた時、という方が正しい。
「発情して、誘った男と居酒屋のトイレで最期までしちゃうなんて、目撃したのが俺で良かったですね」
「あ、ん……っ」
シャツを捲られて、乳首を撫でられる。
「大体、いい匂いだからってホイホイついて行き過ぎです。あの後、足腰立たなくなっていたところに俺が声を掛けてそのままついて行くなんて、危ないと思わなかったんですか?」
乳首を捏ね回されながら、既に限界に達しようとしている性器を強く握られた。
「や、あ、だめ、さわっ…、でちゃ……、ひゃ、んっ」
「俺以外とエッチすんの、禁止ですからね」
玉まで握られて、上下に擦る掌が早まっていく。
「わか、ってる……!」
「もちろん、赤ちゃんなんてもってのほか、なんですからね……?」
くるりと後ろ向きに押し付けられて、うつ伏せに尻を高く上げられた。
「うん、わか、ってる、から……っ、はや、く」
「香山さん、」
入り口に熱くて堅くて、凶暴なそれが埋め込まれていく感覚。
「は、あ……っ」
背中が反って、苦しいけど気持ちがいい。いつだってこの行為は、自分の意思ではないような気がして怖いけれど、暖かだ。
「いつか、俺の子ども、生んでくれたら……嬉しい、な」
息を詰めて、背中越しに呟かれて、でも。
(返事なんか、聞いてくれたことなんて1度もない)
それが何故だか知っている。僕が、1度番になることを失敗していることを知っているからだ。
(いつ、僕を番にしてくれるの)
そう聞きたいけど、聞けない。
(いつになったら、君の、)
子どもなんて欲しいわけじゃない。君が僕のものなのだという証が欲しいだけ。
こんな厄介な体なのに好きだと言ってくれる君と、僕は連れ添ってもいいという証拠が欲しいだけ。
(そもそも、子どもなんて生める体じゃないかもしれない)
オメガの中でも最底辺な僕は、彼と一生を共にすることなんて出来るのだろうか。
(小田くんは、僕とずっと一緒にいたいと思ってくれているのだろうか)
番になった2人は、一生寄り添って生きていくらしい。僕は、1度番になった相手とは上手くいかなかった。
「……香山、さん」
思わず体を持ち上げて、小田くんの頭を引き寄せる。顔を近付けると唇を噛みつかれるようにキスをされた。
僕はこういう切羽詰まった顔をする小田くんを見るのが大好きだ。
(僕は、君のもの)
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