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第2話
滑り台の階段に学ランを着た青年が座っていたのだ。それも傘も差さずにびしょ濡れで、顔には殴られたような怪我をしていた。目を閉じたまま動かないが、その姿は如何にも不良といった様子だ。
「直、猫じゃない」
小さい子を連れているのだ。関わるべきではないと思い、すぐに直の手を引いてその場から離れようとした。
「ねこだよ」
「直!」
直が青年の顔を下から覗き込んだ瞬間、彼の身体が前にぐらりと傾いた。息子を守って俺は傘を放り、青年の身体を支えた。
「おい! 大丈夫か?」
「……ぃ……、………………………」
耳元でぼそぼそと喋られても全く聞き取れなかった。
「なんだって?」
思わず聞き返す。
「……ねみぃ……、腹、減った……」
「は?」
今度は言葉は聞き取れたが、現状を理解するのに時間が掛かった。
「腹減った、って……おい、寝るな!」
腹は減ってるが眠気にも勝てないって、小さな餓鬼かよ? と思ったが、直に「パパ、ねこ、しんじゃったの?」と言われ、俺はとても悩んだ。悩んで、結局、青年を背負って家に帰ることにした。
俺は昔からお人好しと言われている。その性格は、すぐには変えられない。
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