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第4話
「ご、ご飯、出来たけど食べるか?」
自分より背は低いが、青年の野良猫というより猛獣みたいな雰囲気に押されそうになる。この流れがあまりに不自然なことにも気が付いている。
「あんた誰だ?」
寝起きのぼーっとした顔で青年が言う。俺の隣では直が行儀良くオムライスを前にして座っている。青年との距離は割と空いていて、家に来たばかりの野良猫の姿を彷彿とさせていた。真っ黒な猫だ。
「あー、えっと、俺は野崎希一 、お前が公園で倒れたから家に連れてきたんだ。覚えてるか?」
「は?」
は? と言いたいのはこちらの方だ。
「お前、名前は?」
「……徹 」
ぼそりと言ったのが聞こえた。
「てちゅ」
聞こえた言葉を繰り返しただけだろうが、直が徹の名前を言うのに失敗した。
「あん? ぶっ飛ば――」
「徹、小さい子に悪い言葉教えないでくれよ?」
俺がそう言うと、徹はハッとして「ね……」と小さく洩らした。
「ね?」
「ね、猫パンチすっぞ?」
聞き返すと真面目な顔して言うもんだから、ちょっと可愛いなと思ってしまった。
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