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第8話

 直に服を着せて、寝室で寝かしつける。トントンと身体を優しく叩くと直はすぐに寝息を立て始めた。毎日、この顔を見るとホッとする。  暫くして、寝室を離れるとリビングでソファに座る徹の後ろ姿が見えた。テレビを見るでもなく、ただ座っている。 「徹、ありがとな」  人一人が入るくらいの隙間を空けて隣に座ると徹は静かに口を開いた。 「俺が」 「ん?」 「俺が……ありが……」  そこで言葉は無くなってしまった。照れているのか目を合わせてくれない。少し意地悪をして聞こえなかったフリでもしようかと思ったが、徹の今の表情があまりにも可愛くて、それは出来なかった。同性に可愛いという感情を持つのはおかしなことだろうか? 「そうだ、徹、湿布」 「あ?」 「ちゃんと貼っておかないと早く治らないぞ?」  クローゼットから取り出した薬箱を開けて、徹に湿布を手渡した。 「あんた……、どうして、俺を助けた?」  そう言いながら手渡された湿布を見て徹が戸惑っているのが分かる。まさかとは思ったが、貼り方が分からないのだろう。 「直がお前のことを捨て猫だと思ってて、気付いたら拾ってた。――ここ持って」  徹の手から湿布を取り、スウェットの裾を捲る。裾を徹に持たせ、俺は湿布を痣の上に貼った。 「まあ、間違いでもない……」 「え?」 「なんでもない」  横顔がこれ以上は何も言わないと語っている。 「……そろそろ寝るか。川の字だけど良いか?」 「別になんでも」  てっきりソファを選ぶかと思ったが、徹は大人しく直の隣に横になった。  

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